年上の事情。‐プロローグ-1
五十嵐亜季(26)未婚。職業、アパレル関係。
四捨五入したら30‥なんて考えたくない。
でも身体は正直だ。
外食した次の日は胃がもたれる。オールなんて、恐ろしすぎるっ!
いつからか、ドラマも見なくなったっけ。
こんなあたしでも周りの人に歳を言うと驚かれる。どうやら外見はまだまだ若いらしい。
彼氏いない歴はー‥1年半。あー、もうそんな経つのか。今は仕事が恋人‥なんて言ってみる。
でもまんざら冗談でもなかったりする。あたしは仕事が大好きだ。
短大卒業後、子供服ブランドの会社に就職し6年目になる。
好きなことに熱中できる。それがあたしが若く見られる理由かも。
4月某日――‥
子供服ブランド『スター☆スターズ』広告部にて――
「――ファッション業界の中で今最も注目を集めてるのは子供服だ。その中でも‥」
広告部・石原部長(男・31)が新入社員3人を前に熱く語っている。
「部長、長いっす‥」
あたしは、まだまだ長く続きそうな話に割って入って言った。
「そうそう、入社式でも社長の長い話、聞いて来てるのに」
入社3年目・永瀬香(女・22)も、あたしの隣から突っ込んだ。
いっきに笑いが起こる。
新入社員もクスクス笑い出した。
今日は会社の入社式があり、業界内で利益上昇中の我が社にはなんと50人近くもの新人が入ったらしい。すごいな‥
そして広告部には3人が配属されてきた。
女子1名、男子2名。
あ〜若い。毎年思うが、やっぱり今年も若い。
それもそうだよな。あたし6年目だし、広告部内では中堅だもんな。
「先輩も若いですよ。見た目は。」
香ちゃんが横から言う。
「あたし何も言ってないじゃん」
しかも一言多いしっ!
「久々のメンズですよ〜、先輩」
香ちゃんは目をキラキラさせている。
新入社員その1、
祝さやか(20)
――‥
「五十嵐、永瀬。今日撮影だよな?3人も連れていってやれ」
おっと。部長命令。
あたしと香ちゃんはパンフレット担当。今日は秋冬のパンフの撮影がある。子供モデルもいっぱいいるスタジオに新人を連れて行け、と。