cry for the moon-1
このくににらくえんなんかないんだよ
窓の外。夜の月。
ずっと昔の物語。
いつも泣きながら紡いできた。
灯子は薄い布に包まって、すやすやと寝息をたてはじめた。
優哉はすこしだけほうっと息を吐いた。
幸せってどこにあるんだろう?
それはどんな色?どんな形?触れられる?触れられない?
夜の闇。星の崩れた破片を拾い集めて願っても、所詮は壊れた、なり損ない。音を立てて崩れいく。
誰かがどこかで笑ってる。
僕達はこの世界で生きにくい。
だからお日さまを見据えて、地面に足をしっかり伸ばして立っている。
何もなかった君と僕の足下からいっぱいの草が生えてきて、足を搦めとって花を咲かす。
それでも僕達は手を繋いだまま、沈まないお日さまを見据えてる。赤茶色く錆びて、動かなくなって、きっと息も出来なくなる。
それでもその身体を蔦って緑は花を咲かす。
緑は二人の繋いだ手にも伸びていって、二人を繋ぐのは手だけじゃなくなる。
たくさんの花や、蔦や葉っぱが伸びていく。
お日さまの下。
二人の陽炎。
「ねえねえ優ちゃん」
何時の間に目を覚ましたのだろう?
灯子は布に包まったまま大きな目を何度か瞬きさせて、嬉しそうに笑った。
「月が綺麗だねぇ。」
cryforthemoon?
end