Out of reality the world-8
――死んだ。
頭の中にそんな言葉が過ぎる。迫りくる化け物と、怖いにもかかわらず両腕を広げて僕を守ろうとする彼女。それは、まるで映画のワンシーンのようで、僕はそれを他人ごとのように見ていた。すべての動くものがスローモーションをかけたかのようになり、確実に僕達は死へと向かっていた。
僕はあとわずかまで迫ってきた化け物に対して目を瞑る。
――17年間生きてきた僕の人生はこれで終わるのだろうか……。
つい数時間前まで過ごしていた平凡な日常に懐かしさを感じる。
僕そうあきらめた――瞬間。何かが風を切る速さで僕の顔の横を通りかかった。
それは化け物に向かって、綺麗な直線を描いて飛んでいき、やがて化け物の眉間に鮮血の花を作る。
眉間になにやら棒状の物を生やした化け物は悲鳴を上げ、やがてその大きな体は地面へと倒れた。
「…………」
しばしの沈黙後、さっきまでかかっていたスローモーションが解け、時間軸が通常に戻る。
――何が……起きたんだ? 何で、化け物が倒れているんだ?
「ミル! 大丈夫っ!?」
一連の出来事に唖然としていた僕達に、いや、僕の後ろにいる彼女に誰かが声を掛けた。僕は後ろを向き、声の主を見つけるとそこには、大きな弓を構えた状態で立つ一人の女性がいた。
綺麗な金髪を方よりも少し上まで伸ばし、ピン止めで長く伸びた片方の髪を止めている。目鼻立ちは、僕の後ろで唖然とする少女と同じように、綺麗に整っていて、後ろの少女が可愛いというなら、今僕の目の前で弓を構えている彼女は「綺麗」というべきだろうか……。銀色の鎧みたいなものを着込んでおり、それはまるで中世ヨーロッパの騎士を連想させてしまうほどだ。
「姉さんっ!!」
僕がそんな美女に見とれていると、さっきまで唖然としていた少女が鎧の女性に向かって走りだし、そして飛びついた。
「えっ……お、お姉ちゃん?」
「ミル! 大丈夫だった!? 怖くなかった!?」
「こ、怖かったよ……。すごく怖かった!!」
「もう、大丈夫だから。怖くないからね」
……なんですか、これは? 今、僕の目の前で熱く抱き合っている美女美少女がいる。いや、彼女達の話によると二人は姉妹なんだろうけど、目の前で、なんかこう、二人だけの世界を作られてしまうと、僕はなんなんだろうって思うわけで……。今の僕は蚊帳の外って感じだ。
――疲れた……。
僕は目の前の光景に、今まで緊張や何やらで張っていた気が緩み、急に眠気が襲ってきた事を感じる。
次第に視界が狭まっていき、視線がどんどん下へと下がっていく。たぶん、今僕は地面へと倒れようとしているのだろう。さっきまで聞こえていた周りの音が今は何も聞こえず、かすかに見える先には、僕に気が付いた少女達が驚いた顔をして、何かを叫んでいた。
こうして僕は、地面に倒れた衝撃と共に意識を手放した……。