Out of reality the world-7
「あなたには助けられましたけど育てられた覚えはありませんよ!」
はぁ、まってくこの子は……。って、さっきから僕の心の声が彼女に読まれているのだけど……。
「全部声に出てましたよ?」
「…………ぽっ」
「なんで頬を染めるんですか!!」
「で、なんで君がここにいるの? 逃げたはずじゃ?」
そうだ、確かに彼女は逃げていった。本来なら僕よりも遠くへ逃げているはずで、ここにいるのはあきらかにおかしい。
「あなたを助けに来たに決まってるじゃないですか!」
「…………はっ?」
「今度は私があなたを助ける番です!」
彼女は胸の前で握り拳を作り、笑みを浮かべた。
「え、えっと、じゃ、何か策を考えているの? それとも何かアイツを倒せるようなものを……」
「いえ、何も持ってきていませんし、考えてもいません!」
「即答!? てか何もないのにそんな自信満々に言わないでよ!」
やばい。大声出したらまた傷口が痛み出した。僕は胸の傷口を手で押さえ、重くなった足を必死に動かし前へと進む。
まだ間に合うかもしれない。今はできるだけアイツから遠いところへ逃げなければいけないのだ。僕の血痕の跡を追って、アイツがまた襲ってくる可能性だって高い。
「今ならまだ間に合う。大丈夫。僕も止まるきないから、君は先を行って――「もう……遅いですよ」
ッ!」
震えた声を出して一点を見つめる彼女に、僕も同じように彼女が見ている方向へと目を向けると、そこには顔中黄色い液体を塗った『アイツ』が立っていた。
「逃げろ!」
「嫌です!」
「何言ってるんだよ! 君がアイツに適うわけないだろっ!!」
「そんなのわかってますよ!!」
そう言うと彼女はグッと僕の前に出てきて、両腕を広げた。
やばい。これじゃ確実に二人共殺される。彼女を逃がすにも本人が逃げる気ないし、今の僕じゃ彼女の身代わりになることも難しい。またあの時と同じような事もできないし、なんてったって武器になるものは周りにない。まさに万事休すだ。
『グゥオォォ!!』
化け物が唸りを上げ、牙と同じように鋭くとがった爪を向けて、容赦なく僕達に襲い掛かってきた。