Out of reality the world-2
【2】
歩く。歩く。何のためにって? そりゃここから出るために決まっているじゃないか!
あれから出口があるだろう方向へ歩いてきた分けだが……。歩き出してから何十分、それとも何時間?
歩くも歩くも今だ出口が見えず、周りは同じような景色が続いている。
いわゆる今僕は「迷った」という状況に陥ったのだろう。いや、元からこんな見ず知らずの森にポツンと放置?されていた時点で僕はすでに迷っていたのだろうけど……。
「はぁ……」
これで何度目かの溜息を吐く。疲れからなのかそれとも今自分が置かれている状況に溜息が出たのかは自分でもわからなくなってきた。ほんと、このままのたれ死んでしまうんじゃないだろうか……。しばし自分がのたれ死ぬ光景を想像してみたが、僕は慌てて顔を横に振り、思考を中断した。
「そんなのごめんだ! こんな見ず知らずの森なんかで死んでたまるか!」
僕はそう言うやいなや、すでに疲れが溜まった足を無理やり動かし、再度見えない出口に向かって歩きだそうとした――瞬間。
甲高い悲鳴が辺り一面に響き渡った。
悲鳴なんてテレビのドラマやアニメぐらいでしか聞いたことのない僕は、その、本物の悲鳴を聞いてしばし呆気に取られる。
――今の悲鳴って、声からして女の人……だよね?
僕は男にしては高すぎるだろうと、その悲鳴は女の人によるものだと決め、悲鳴が聞こえた方向へ走り出そうとする。
だが、数歩行った所で僕は思いとどまった。
――悲鳴が聞こえたという事は、誰かがピンチ、もしくは自身が危険な事にさらされているという事じゃないか? だとしたら今僕がその人の方へいったら僕までも危険な目に合うのではないだろうか。もし命の危険にさらされることなら尚更。今の僕、というよりも僕に助けだせるほどの力があるかわからないし、ここは無闇に助けに行かなくてもいいんじゃないか?
そこまで考えた僕は一度思考を中断して、大きく息を吸い、吐き出した。それを何度か繰り返し、そして、手のひらを力いっぱい握りしめ、ゆっくりと開いていく。
ほんの少しだが、自分の中で熱していた何かが冷えていくのがわかった。
――危険な状況に陥っている人がいるのを知っていて、知らぬ振りして見捨てるのは最悪な行為ではないだろうか? もし、死んでしまったら、いや、実際に死なないかもしれないけど……だけど、この先生きていく中で、「見捨てた」とい事実が一生付きまわってくるのは確で。そんな状況で寿命を迎えて死ぬなんてそれこそ、のたれ死ぬよりもバットエンドだ……。
「はぁ」
自然と溜息が漏れた。それはあきらめという合図なのかもしれない。ほんと、僕は馬鹿だ。
どっちにしろ死ぬならこんな気味の悪い森の中で一人寂しく死ぬよりも、女性の近くで死んだほうが、断然ハッピーエンドじゃないか。
こんな簡単な事を悩んでいたなんて……。
「あーあ」
僕は意味もなく声をあげ、そして――
「命に関わるような事じゃないように!」
そう強く願いながら悲鳴の聞こえた方へと走りだした。