ICHIZU…@-5
予鈴が校舎全体に鳴り響く頃、佳代は教室に現れた。彼女のクラスは3階の真ん中辺りだから、練習が終わると1階端の保健室からココまで階段を駆け上がる事になる。
赤のジャージ姿。スポーツ・バッグとリュックを教室奥の荷物置き場に置くと、カバンと水筒を持って自分の机に座る。髪の毛からしたたる汗をタオルで拭いていると、
「アンタも毎日大変だねぇ」
前に座る安田尚美が声を掛けた。
「今日はさすがにバテたよ、尚ちゃん」
「体育館から外見てたらアンタが遅れて走ってるのがみえてさ…よく男子の中で続くねぇ」
安田尚美も女子バスケット部員で、2年生のクラス替えから佳代と同じクラスになった。同じ運動部員という事と、席が前後という事もあり、すぐに仲良くなった一人だ。
佳代はちょっと甘えた声で、
「後でグチ聞いてくれる?」
尚美は白い歯を見せて笑顔を作ると、
「聞くだけならね…」
すぐに本鈴が鳴り出し、担任の先生が教室のドアーを潜ってきた。佳代と尚美はおしゃべりを止めるとイスから立ち上がった……
…【ICHIZU…@ 完】…