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しにがみハート
【コメディ 恋愛小説】

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しにがみハート#10-2




「話を聞いてるのか!! 絢芽!!」
暗闇の中に見えるは二つのシルエット。
小柄な女性と、異形の怪物。
「聞いてるじゃないですか!? 早く帰してくださいよ!!」
「お前は自分のしたことが解ってるのか!?」
「人一人殺さないのがなんで問題になるんですか!? それに私は死神になんかなりたく…」

パシィ……

頬を叩く音が響く。

「……な、なにするんですか…」
頬を押さえてうろたえ、後ずさる。
「…お前はもう死神になってしまったんだ。それはもうどうしようもない。ただ、仕事はしなくてはならない」
異形は、諭すように問い掛ける。
「私が、孝紀さんを殺したくないことくらい、解らないんですか!? いくら貴方であろうと、殺しますよ!?」
超大鎌を振りかざし、詰め寄る。
背後の柱が、大きな音を立てて崩れ落ちた。「なら、綾瀬孝紀を殺せば、お前を永久に自由にしてやろう」
「…っ…そんな…」
超大鎌を落とし、黒装束は泣き崩れた。





自由が欲しい。
孝紀さんと会いたい。
孝紀さんに会う条件は、
孝紀さんを抹殺すること。

会える=会えなくなる
孝紀さん
孝紀サン
コウキサン

「あああああああああああああああああっっ!!!!!!!」

渾身の力で壁を叩く。

「なんとか…なんとかしないと…」

一筋の涙が流れて、頬を濡らした。





「一回死んで、死んだことを確認させてから、生き返らせるわけです」
月明かりのベンチの下、姫雪の作戦を考える。
「もし生き返らせるのが失敗したら?」
「さよなら、です。絢芽さんは、必ず貴方を殺しにくるでしょう。ギリギリの致命打を当てて、殺されたように見せ掛けるはずです」
「それなら、俺が死ぬ必要は無いんじゃないか?」
死んだふりで解決するならそれの方が安全だ。
「絢芽さんは今や要注意人物。確実に数人同行者がいるでしょう。そんな中ごまかせたら奇跡です。だから、一回完全に死ぬんです」
「な…なるほど」
「すいません。非現実的すぎますよね。色々と」
確かに。
「まぁでも、絢芽を助けなきゃならないわけだし、俺だって元はいないはずの人間。死ぬのは恐くない」
「なら、これで行きましょう。絢芽さんはいつ来るか解りません。きちんと殺されないと、作戦失敗です」
「…わかった」


『きちんと殺される』
おそらく人間でそんな目標を持ってるのは俺だけだろう。
だが、これで平穏な日々がまた迎えられるというのならば、そんな目標でもいいじゃないか。
生き返らせるだとか、宗教的なことは信じたことはなかった。まさか自分がそれを体験する目に会おうとは。

「どうか神様、俺に味方してください」

生まれて初めて想像した神に、俺の大きな願いを、捧げた。


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