分かって欲しい-2
「どうしたんだ?」
「この前言ってた写真、持ってきたの」
ユウ君と真由美が、話のやり取りを始める。
「家に行ったら居なかったし、たぶんここじゃないかと思って」
「わざわざ悪かったな」
「いいの。気にしないで・・・・私が好きでやってることだから」
「ありがとう。真由美」
「そんな・・・お礼なんて・・・・」
真由美は恥ずかしそうに、俯いた。
何だか、全然面白くない・・・。
私は真由美が嫌いだった。
鼻を刺激する香水の匂いも、ユウ君を独占して分からない会話をするのも、好きじゃなかった。
私は自分の存在を主張するように、鼻をフッ!と鳴らす。
すると真由美は私を見て微笑んだ。
「こんにちは。花ちゃん」
ニッコリと手を伸ばしてくる。
だけど私は触らせてあげない。
少しぐらいイジワルしてやれ・・・・なんて思ってしまう。
ユウ君の後ろに隠れながら、私は真由美のいつもの口癖を待った。
「まだ慣れてくれないのね」なんて、ガッカリした顔を想像していたのに、真由美は笑いながら私に四角いモノを見せた。
「今日は写真しかないけど・・・ほら」
いつもと違う様子に、私は首をかしげた。
写真を見ると、黒い顔の変なヤツがこっちを向いて座っている。
[なに? これ]
「実家にいるケンって名前の男の子。性格がとってもいい子なの」
[だから?]
「今度会わせてあげる。花ちゃんと仲良くなれと思うから」
[仲良く? こんなヘンテコなヤツと?]
私はウゥ〜と顔をしかめた。
[やだよ〜]
「大丈夫。きっと好きになるわ」
[好きになんてならないよ。私が好きなのは、ユウ君なんだもん]
言ったのに、真由美は嬉しそうだった。
ユウ君も嬉しそう。
「良かったな・・花。お前と同じパグ犬だぞ。この子なら、お婿さんにピッタリだな」
[だから! 私は犬だけど、好きなのはユウ君だけなんだってぇ〜!]
ワン! ワンワン。ワォ〜ン!
一生懸命鳴いたのに、
「ウゥ〜、ワン! ワン! ウォーン」
二人に私の犬語は、通じなかった。