楽しいね〜1〜-1
「葉山君」
「ん?」
「見て、この本」
「うわ!ひでえなこりゃ」
小谷が持って来たその本は、表紙がもうボロボロにはげていて、60ページ目から120ページにかけてごっそり抜け落ちていた。
「直せるかな?これ」
小谷が聞いてきた。
正直、直せるかどうかわかんなかったが…
「直せるよ」
そう何故か断言した後、「たぶん」と付け加えた。
小谷はクスッと笑って、その本をケースに入れた。
そして、俺達はまた本の整理を再開した。
「………」
「小谷は去年何やってた?委員会」
なんとなく静かになるのが嫌だった俺は、本の整理をしながら小谷に聞いた。
「おんなじ」
え?
「去年も図書委員会やってた」
あ、そうゆうこと。
「へえ〜」
「でね、来年もやろうと思ってるんだ」
「それって、やっぱり本が好きだから?」
「うん」
笑顔で大きく頷く彼女を見て、本当に本が好きなんだなと俺は思った。
俺にして見れば、ただ本棚に本を入れるだけのつまらない作業。
でも小谷にとっては違うのだろう。
手に取った本一冊一冊に、心の中で挨拶をしているのだろうか。
今の小谷を見ていると思う。
そんな彼女に俺は見とれていた。
そして、惹かれていった。
「葉山君」
!?
なんかわからないけどびっくりする。
「な、何?」
「そろそろ帰らない?」
外を見るとけっこうな暗さになっていた。
「そうだな」
まだ全部整理しきれていなかったが、明日もやるということで俺達は図書室を出た。