『涙を止める魔法』-1
「どうした?顔赤いぞ?熱でもあるんじゃないのか?」
そう言って私のおでこに手をつけた。
そうすることによって、私が余計に顔を赤くすることを知りながら…
「熱なんかない!」
素直になれない私は、
「あなたがいるから。」
「あなたに見られてるから。」
「あなたが好きだから。」
とは言えない。
でも、あなたは私の考えを全て見透かしているかのように微笑んだ。
私は、それが悔しくて、でも私のことを知ってくれていることが嬉しくて…
だけど、素直になれない私は拗ねてしまう。
「まだまだこどもだね。」
そう言われて悔しくて、
「私、こどもじゃないもん!もう大人だもん!」
「これくらいで怒るんだから、まだまだこどもだよ。」
そう言われて私はうつ向いていた顔を彼の方に向けて、睨むつもりだった。
そう…
つもりだったのに…
あなたの顔が目の前にあって、その目に吸い込まれそうになった私は、金縛りにあったように動けなくなった。
そんな私を見てあなたは
「俺は、まだまだこどもっぽいお前が好きだけどな。」
そう言って優しく髪を撫でてくれた。
何よ…
卑怯じゃない…
目の前でそんなこと言われたら…
泣いちゃうじゃない…
涙をこぼした私に彼が、
「涙を止める魔法って知ってる?」
と聞いてきた。