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五月の雨
【エッセイ/詩 恋愛小説】

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五月の雨-1

君が笑った。
今、世界に一つ
笑顔が増えた。

それが妙に嬉しくて、僕も、
笑った。


通り雨は
しばらく、止みそうもない。

軒先の雫が
君の前髪を濡らした。
凍えた様に震える肩。

五月の雨は、
まだ少し冷たく、
二人の間に、
降り続ける。


抱きしめたい気持ち。

抱きしめられない僕。


どうしようもないジレンマ。


家に帰れば、
僕を待ってる人が居るのに。
僕は君から目が離せない。

僕は、間違いなく卑怯だろう。

いつの間にか、心に、君の為のスペースが出来ていたんだ。

愛じゃない。
だけど、


君が、愛しい。


君の指先が
軽く触れた。
あまりに冷たくて、
ギュッと、握った。


君は驚いたように僕を見て、恥ずかしそうに目を伏せた。

頭が白くなって、
君でいっぱいになった。

君の鼓動で僕が満たされていく。


臆病な僕。
臆病な君。

誰も報われない。




僕は繋いだ指をそっと、放した。


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