手紙-1
なあ、おしえてくれ。
なぜ“お前”は俺の元を去ったんだ?
そりゃあ、原因がわからないとは言わないよ。
あの時の些細な喧嘩が原因だよな。
“俺たちのこれから”について話していたら、お互い擦れ違いが生じて、言い合いになったんだったな。
なんでだろう。
なんであの時、すぐに仲直りしなかったんだろう。
いつもなら翌日には笑い合っていたのに。
あの日はなんだか雰囲気がおかしかったな。
お互いに熱くなる性格だけど、あの日は異常だった。
あの時、あんなに怒鳴ったりしなければよかった。
普段は全く怖じ気ずかない“お前”が、肩を揺らしていたの、気付いてたんだ。
そんなにも“お前”の心は傷んでいたんだね。
あの時、“お前”の立場に立って考えればよかった。
だから“お前”にも怒鳴らせてしまった。
普段は渋々許してくれる“お前”があの日は決して身を引かないのが不思議だったんだよ。
俺は言った。
少しでも早く、結婚したいと。
“お前”は言った。
まだ待ってほしいと、決心がつかないと。
翌日、お前は手紙を置いていった。
手紙って言ってもそういいもんじゃない。
ただ一言。
『さよなら』
許してくれとは言わない。寄りを戻してほしいとも言わない。
だから、どうか元気で。
元気でいてください。
今の俺はこんなこと言うだけで精一杯だ。
“お前”は今なにしてるんだろう。
相変わらず、俺はお前との写真や手紙などを、黙々と段ボールに詰めている。
なんでこんなに作業が遅いかって?
片付かないんだよ。
いつまで経っても。
物も心も。
見れば見るほど。
思い出せば思い出すほど。
抑えきれない気持ちが込み上げる。
俺はまだ、さよならとは言いません。
言えません。