朧月夜と満月と…-7
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「俺は…………なんだよ……」
陽がうつ向いてぼそっと言った。
その言葉が聞き取れた様な、聞き取れなかった様な…もう頭の中がグチャグチャで、全く追い付いて行けてない。
「俺は、みぃの事が好きだっ！」
今度はハッキリと聞き取れた。
意味もちゃんと理解し…
「……って、えっ！？嘘っ！？」
「こんな所で嘘を吐いてどうすんだよ…」
「だ、だって陽……って、え゛ぇっ！？」
「そんなに驚かれっと…さすがに傷付くんだけど……」
「ご、ごめん…」
陽の今にも泣き出しそうな瞳を見て、私は静かに口をつぐむ。
まさか陽の口から『好き』という言葉が出て来るとは思っていなかった。
だって陽はそんな素振り、全然見せなかったから…だから、私の事を“女”として意識してないのかと……
私の様子に、陽は小さく息を吐くと、そのまま弱々しい声で続けた。
「俺にはあれを無かった事にするなんて、どうしたって出来ねぇよ。それでも『忘れろ』と言うんなら…俺の所にはもう来んな。」
「そ…んな……」
「頼むから…俺の前でそんな無防備な姿…晒すなよ……」
陽が近付いて来て、濡れたままの私の髪を指先でツーと撫でる。切なそうに瞳を揺らして…
「もう俺には…みぃと今まで通りに幼馴染みでいてやる事なんて…出来ねぇから……」
そして陽は、『ごめんな』と苦しそうに言って私に背を向けた。
その背中がやけに寂しそうで…私は何も言えなくなる。
これで良いの？
このままで良いの？
私はどうしたいの？
沢山の自問が脳裏に浮かんでは消えて行く。
今すぐに答えを出さなければいけないのは解ってる。もしここで答えを出すのを諦めてしまったら…たぶん私は、もう陽とは一緒に居られない。
“現状維持”という答えは許されない。陽の想いを受け入れるか、陽と決別するか…それしか私の選択肢は無い。
陽を失うのは嫌。でも、今の居心地の良い関係から恋人という関係になるのが怖い。
「もう遅いから…今日は帰れよ……」
陽が私に背を向けたままで言う。
いつだって近くに感じていた陽が、今は物凄く遠い。その心が私からどんどん離れて行く。
こんなの…やだ……
次の瞬間、頭で考えるよりも先に体が動いていた。
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背中に感じる体温と柔らかい重み…咽の辺りがツンと痛くなる。
「みぃ…離れろよ……」
「やだっ！」
「頼むから…」
「離れないっ！」
みぃは俺の背中に抱きついたまま…俺を強く締め付ける。
こんな事をされたら、期待してしまう。離れてやれなくなる。
せっかく俺が、身を引こうと決心した所だったのに…
「私、絶対に陽から離れないからっ！」
みぃの言葉と行動が俺の心を揺さぶる。
俺はみぃをメチャクチャに抱き締めてしまいたい衝動を、グッと抑えて言った。
「みぃ…もう帰れよ……」
「帰らないっ！帰りたくないっ！」
「お前…俺が言った事、ちゃんと解ってるか？」
「解ってるっ！」
「……昨日の二の舞になっても知らねぇぞ？」
「いいもんっ！」
みぃの一際強い声に、俺の中で必死に抑えていたものが一気に溢れ出した。
自分の体に絡まるみぃの腕を振りほどいて、そのままベッドへと押し倒す。
想いが抑えられなくて…みぃを手に入れてしまいたくて…もうどうしようも無い。