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朧月夜と満月と…
【幼馴染 恋愛小説】

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朧月夜と満月と…-3

「情けねぇ…」
穏やかに眠るみぃの髪を撫でながら、俺は自己嫌悪に浸ってしまった。
「月の力に頼らないと、みぃに触れられないだなんて…俺って、カッコ悪ぃ……」
宿題なんてのはただの口実で、本当はもうとっくに終わっている。
俺は今日が満月だって事を知ってて、わざとここにやって来た。
みぃの体質を利用してでも、どうしてもみぃに触れたくて…

昔から兄妹の様に育ったみぃの事を、いつからか“女”として意識する様になった。意識する様になったら、今の関係が崩れるのが怖くて、触れる事すら出来なくなった。
本当はもうずっと前から、みぃに触れたくて触れたくて堪らなかったのに…
みぃが俺の事を何とも思ってないのは知っている。だから、この気持ちは伝えられない。みぃを失いたくはない。
でもそれも…もうそろそろ限界かもしれない……

「みぃ……好きだよ。」
俺は眠り続けるみぃの額にキスを落としてから、枕元の目覚まし時計をセットしてみぃの部屋を後にした。
外に出ると、頭上ではまだ、ぼんやりとした朧月が輝いている。
本当の姿を上手くぼかしているその月は、まるで俺自身の姿を見ている様だった。


*******


私は、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ました。
「なんか幸せな夢…見てたんだけどなぁ……」
まだボーっとしたままの頭で、夢の内容を必死に思い出す。
えっとぉ…どんな夢だったっけかなぁ?
見ていた夢は、確か…誰かが私に『好きだよ』と言って額にキスをしてくれる夢。
でも、相手の顔がどうしても思い出せない。

「ドキドキ…してる……」
私は両手で心臓の辺りを押さえてみた。そして、ふと気付く。
あれ?そういえば私…昨日の洋服のまま?それに、目覚まし時計も…セットしたっけ?
寝る前辺りの記憶だけが、スッポリと抜けてしまっている。

ん〜、どうしたんだっけ?
しばらく腕組みをして首を捻っていると、机の上に置いたままになっていたノートが目に付いた。
一冊は私のノートで、もう一冊は…
「あ゛、あぁあぁぁ…」
昨日の一件を思い出して、私は物凄く動揺してしまう。
どうせなら忘れていたかったのに、最悪な事に全部覚えている。満月を見て陽に甘えて抱きついた所から、熱〜いキスをしちゃった所まで全部…
ちょっとぉ…陽とどんな顔して会ったら良いのよぉ……
朝っぱらから泣きたくなってきた。
どう考えても、昨日の出来事は全て私が悪い。
昨日は満月だったのに朧月だからと油断して、満月だという事すらすっかり忘れてしまってたんだから…

もう既に気付かれてるとは思うけど…実は私、満月を見ると人格が変わる。
詳しく言うと、甘えたがりになる。霧消に人肌が恋しくなる。
誰彼構わずくっ付いては、撫でてだの抱き締めてだの…素面では絶対出来ない様なおねだりをしてしまう。恥ずかしい事に…
最近は月の周期をチェックして、満月の日は早く帰宅するとか、夜になったら人に会わないとか…物凄く気を付けていたのに……
ど、どうしよう…
あんな事をしてしまったのに、陽とこれからどう接したら良いのか分からない。
「もぉっ、嫌だなぁ…」
学校…行きたくないよ……


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