微かな夢-1
「離さないで」
眠っているとばかり思っていた。
だから、身体を起こして……声がしたのは意外だった。
「眠れないのか」
「眠れるよ。眠ってた」
それでも、俺からその手を離す様子もなく。
「一人は、嫌なの」
「散々聞いた」
「うん……。でも、やだ」
多分、寝惚けているのだ。
そして、そういうときこそ彼女は頑固だ。
「何処にも行かないさ」
「…………いらない」
「ん?」
「何処へ行っても良いよ。でも、帰ってきて……」
勿論という呟きは、きっと再び眠りに落ちた彼女には届かなかったのだろう。
「何処へ行けっていうんだよ……」
そんな姿を見せられて。
離れられないのは、俺なのに。