「叶わぬ恋」-1
ある墓地の、ある墓の前に、明らかにそこには不似合いな女子高生が一人。花束を持ってしゃがんでいる。
彼女は今、恋をしている。叶わぬ恋を。
一時は彼女にもチャンスがあったのだけれど、彼女はそれを逃してしまったらしい。彼女が恋した相手は、ついこの間、交通事故で帰らぬ人に。
今となってはもう本当に、叶わぬ恋になってしまった。
彼女は花を供え、手を併せ、心を落ち着かせた。
墓石に向かって、語りかけるように話し始める。
『久しぶり…。来てあげたよ。』
彼女は懐かしそうに微笑んだ。
『…あたしねぇ、本田のこと好きだったんだよ〜?知ってた?…………知る分けないっか』
目には涙がたまっていたが、それをこぼすことなく彼女は立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。
『死人に口無し…かぁ。』
彼女は仕方なさそうにそう言うと、澄んだ高い空を見上げる。そしてまた、もと来た通路を、一人歩いてゆく。一歩一歩、確かめるように。
-END-