投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

秘密
【その他 恋愛小説】

秘密の最初へ 秘密 21 秘密 23 秘密の最後へ

秘密〜和馬の祈り〜-5

5 秘密
〜和馬の祈り〜
高三:冬

「かぁーずまぁー」
「うお゛っ」

突然後ろから襲われた。

「俺、大学行けねぇかもぉ」
ずるずると背中にぶら下がる。
「邪魔っ!!重い!」
「良いよなぁー。お前は、音楽学校推薦だからぁ」
いいないいないいないいないいないいな

ーウルサイ。

「っだあっ!!」
ぐおっと背中の荷物を投げる。

べちっ

「いっでぇぇぇぇ!!!」
顔面から入ったみたいだ。
良い音がした。
「ひっでぇ。・・こんな良い顔を・・・」
「あ゛?」
「イエ、ナニモ」

 何故片言になる。


「そだ、病院行くだろ?」
鼻を抑えながら話す。
「勿論」
タオルを濡らして渡した。
「せんきゅう」


「なにしてんの?」
病室に入るなり、聞かれた。
「あ゛っ、聞いてよ。君の旦那ちょっと狂暴」
翔が、ワザトらしく右手首を動かしながら話しかけた。
「人の奥さんに馴れ馴れしくしないでくれる?」
ぐいっと翔の腕を引っ張り、
「こいつの言うこと聞くな」
ぽんぽんと皐の肩を叩く。
「あははっ」


「・・・・・・え?」
耳を疑った。

ー何を言っているんだ?


「何を言ってるか分かってんのか?」
目の前の少女を見つめる。

「分かってるよ。私は、もう長くないんでしょう?」
なら、と目を反らされた。
「もう、来ないで」

どくっ

心臓が高く波打つ。

「何で!!」
分からない。何で突然。
昨日までは普通に話していたのに。

「私は、和の足枷になりたくない。イヤなの。私が死んだら、和は私を忘れないでしょう?・・ダメよ。忘れて」
「皐っ!!」
がっ、と皐の腕を掴む。
「っや、忘れて!お願い!!・・・和には、未来がある。私なんかのせいで台無しにしないで・・っ。お願い・・・っ!!!」
悲痛な叫び。でも、
「嫌だ。忘れない!!絶対!」
「か、ず・・」
「側にいる。最後までずっと!!・・・皐が気にするのなら、」
す、と離れ、皐の点滴の針を抜く。
「っイタ・・・。和?」
困惑したように見つめられた。


「未来なんて、いらない」


 ぷつ


針を自分の腕に刺す。


「っっいやあぁぁぁぁ――――っ!!!」

皐の声が、病室に響く。


「だめっ!!抜いてっ、早く!!!」

ばっ、と俺の腕から針を抜く。

「洗って!!みずっ!はやく、和馬!」


「皐」
慌てる彼女の腕を掴む。
「何っ・・・・っん」
深く口付けた。ー・・・愛おしむように。


「なにを、考えてるの・・・?」

ぽつっ

 皐の涙が、俺の頬にあたる。

「皐の側に居たい。未来など要らない。お前が居れば良い」

 ーそれだけで良いんだ。

「ばか・・・っ」

「分かってる」

ー呆れるくらいに。


「本当に、良かったのか?」
翔が怒ったように尋ねてきた。
「あぁ・・・」
「阿呆か、お前」
「そうだな」

はあっ、翔の溜め息が聞こえる。

「ごめん、な」
「まったくだ」
ぴしっと額を跳ねられた。

「まあ、発病まで人によって差があると言うし?お前の場合、一生発病しそうにねーからな」
「俺は、今すぐでも良いんだけど・・」
ぽそっと呟く。
「だあっ!!俺がヤなの!幼馴染みが二人供なんて、寂しいじゃんか」
分かったか?と鼻を摘ままれた。

ーいてぇ。


「皐が、泣いてたぞ」
「・・うん」
「自分のせいだ、って悩んでる」
「ー分かってる。でも、・・・」


「ったく、やっと俺の大学が決まったというのに」
暗いぞ。と睨まれた。
「すまない」
「謝りすぎ。一回で良い」
はい、と缶コーヒーを差し出された。
「ありがと」

ーアタタカイ


秘密の最初へ 秘密 21 秘密 23 秘密の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前