秘密〜和馬の祈り〜-3
3 秘密
〜和馬の祈り〜
高一:春
「皐っ!!」
ある日、突然皐が倒れた。
「大丈夫よぉ。単なる貧血。心配しないで」
お見舞いに行くと、笑って迎えられた。
「皐・・・。無理するなよ?」
「珍しー。・・和がこんなに優しいなんて」
変なの。
くすくすと笑う。
「こんな時ぐらい、女らしくしてな」
翔が、くしゃっと皐の頭を撫でた。
「あーっ、翔ちゃん、和を襲わないでよぉ?」
「さあ、どーしよっかな」
ははははっ、と笑いが広がる。
ー俺の気持は無視かよ。オイ
「皐の病名、聞いただろう?」
病室を出て、翔に聞かれた。
「・・ああ、」
ー聞いた。
『エイズ』
「皐は?」
「まだ知らない。・・・言えないだろう?」
苦笑いをする。
「お前、言えるか?俺が変わりに言ってもー・・」
「いや、」
翔の言葉を遮る。
「俺が言う。ー・・俺に言わせてくれ」
ー懇願するように・・
「分かった。絶対言えよ?」
心配そうに俺を見る。
「あぁ・・・・」
皐には、両親が居ない。親戚もだ。
今、支えとなれるのは俺と翔しか居ない。
「教えてよっ!!」
ガシャンッ
花瓶を倒された。
「私、何の病気なの!ねえっ!!!何で教えてくれないのっ!?」
「皐っ、落ち着けッ」
ばしばしと胸を叩かれる。
「教えて!!和、ねえっ!」
「・・・っ」
「教えてよぉー・・」
力無く皐の腕が落ちる。その姿が、とても痛々しい。
「まだ、言ってなかったんだな・・・」
翔が呆れたように話す。
「ああ」
二週間も経つというのに、今だに皐に病名を言えなかった。
「どう、言えば良いんだよ・・・?あんなっ、病名を知らなくてもあんなに不安定なのにー・・・っ。これ以上言ったら、皐が壊れそうで怖いんだ・・。なあ、俺はどうすれば良いんだ?教えてくれよ・・・・」
「和馬・・・」
心配そうに俺を覗き込む。
「無理すんじゃねぇ。ー・・お前には、少し重荷だ。俺が代わりに言う。お前は、少し休め」
な?と肩を軽く叩かれた。
「ー・・すまない、翔」
ー俺は、何もできない・・
「良いって。ー・・・俺だって、皐の友達だ」
にかっと翔が笑った。
「ちっこい頃からの友達だ。二人とも大好きだからな」
ぐしゃぐしゃと髪を混ぜられる。
「ー・・・さんきゅ、・・・・バイセク」
「オイ?人が親身になってんのに、バイセクとは失礼な」
「俺はお前にはなびかねぇ」
ー本当に、ありがとう。
お前が居たから、少し笑えた・・・。
「さ、行くか」
「ああ。」
皐の元へ、真実を伝えにー・・。