秘密〜和馬の祈り〜-2
2 秘密
〜和馬の祈り〜
「久しぶりだぁ。相変わらず、無駄に大きい家だねぇ」
「文句言うなら、帰れ」
「うそうそ。ジョーダンよ?」
「・・部屋、あっち」
す、と自分の部屋を指差す。
「あれ?部屋の場所変わったんだ?」
良く変わるねー。と皐が感心したように呟いた。
「流石、旧公爵楸家。お金が有り余ってんだねぇ」
「ー・・・・嫌味か」
まさかぁ、とにこやかに答える。
「感心してるだけ」
―旧公爵楸家―
平安時代後期から続く、言わずと知れた名家だ。
明治時代に『公爵』の爵位を貰い、その後、大正・昭和・平成と栄えてきた一族。
和馬は、その跡継ぎである。
ー・・面倒臭い・・。
つくづくそう思う。
「和?どうかした?」
ぶんぶんと目の前で手を振られた。
「ーいや・・、」
ー今はまだ、そんなことを考えたくない。
「あっ、ねえねえ。ピアノ弾いてよ!!久しぶりに聞きたいなぁ」
お願いっ。と手を合わせて頼まれた。
「えー・・・」
ー面倒だな・・・・。
「あっ、今、面倒だと思ったでしょぉう!?」
皐が、怒ったように俺を見る。
「うん。」
躊躇無く答えてしまい、後から少し後悔する。
「ひっどぉ!それが、最愛の恋人に言う言葉ぁ!?」
びしびしと叩いてきた。
ー・・結構痛い。流石は女子空手部。
「良いじゃない、一曲ぐらい」
むーっと睨んできた。 その顔を可愛いと思ってしまい、少し照れる。
「だーめ。まだまだ人に聞かせれない。下手くそだから」
ぽんぽん、と皐の頭を軽く撫でる。
ー小せぇな。
「もうっ、子供扱いしないでよぉ!!同じ歳なんだからぁっ」
「ははっ」
「もぉっ。・・・あ、そぉだ」
何かを思い出したようにぽんっと手を叩く。
「何?」
「ピアノ、いつか聞かせてね?」
「えー・・面倒」
皐の瞳から、目を反らしながら答えた。
いや、本気で面倒なのだが。
「いつか、よ。いつかでいいから、絶対よ?んで、有名になって私のために、一曲くらい作ってよ」
「・・・・・・」
「黙らないの」
「曲なんて、簡単に作れる物じゃねーぞ?」
「いーの。まだまだ先は長いんだからぁ」
うふふっ、と笑う。
「後、20〜30年待て。」
ふっと笑い、そっと皐の頬に触れる。
「・・ん」
ー柔らかい・・。
「今日は、ここまで」
首筋に触れようとしたところを止められる。
「・・・。何で?」
少し苛ついたように言ってしまった。
「何ででも。ー・・・・そろそろ帰らなくちゃ。じゃあね」
立ち上がり、部屋を出ようとする。
「皐、」
「え?」
何?と尋ねようとした唇を塞ぐ。
「・・・バイバイ」
すっと離れ、右手を軽く振る。
「バイバイッ」
満面の笑みで返してきた。