着信履歴-1
ふと気が付くと、着信履歴のほとんどを“お前”が占めていた。
それを見て苦笑い。
一番古いのは……三ヵ月前。
用件は何だったかな、と少し考える。
なぜだか、すぐに思い出せた。
俺に似合うマフラーを見つけたから見に来いって、場所だけ告げて一方的に電話を切ったんだったな、“お前”。
俺は何がなんだか分からず、急いで車を走らせたんだぜ?
到着して、すぐに駐車。
デパートの入口に立っている“お前”に駆け寄った。
“お前”は満面の笑みだったな。
どのマフラー?って聞いたら、“お前”は誇らしげに紙袋を掲げたな。
本当に子どもみたいに。
もう買っちゃった!って。
バカだろ、“お前”。
急いだ意味ないじゃん。
けど俺は、その笑顔が本当に本当に愛らしくて。
艶やかな髪をくしゃくしゃにしながら、照れ隠しで頭を撫でたっけ。
そしたら“お前”。
なんて言ったか覚えてるか?
来月の給料で金かえせ、って。ふざけるなよ。
でもやっぱりうれしくて。
俺はその場で紙袋を破って、黒のマフラーを首に巻いたよな。
そしたら今度は“お前”。
来年は作ってあげるからね、だって。
来年なんて来ないのにな。