その後の淫魔戦記-13
「ん!」
たっぷり舌を絡め合ってから、直人は有月に移った。
三者三様に腰を使いながらの、淫靡なキスは続く。
「ん……っ!」
しばらくして、未緒が切羽詰まった声を出した。
両性の快楽を享受する立場は、やはり上り詰めるのが早い。
それを理解したか、有月が妖艶な笑みを浮かべる。
「最後にここまで尽くして貰えた妾は、幸せじゃな。では、仕上げといこうか」
それを聞いた未緒は、猛然と動き始めた。
男としての快楽を解き放ちたくて、体がうずうずしている。
「っあ……!あ、直人!?」
いきなり未緒が、狼狽した声を上げた。
今までゆっくり前後していた直人の腰が、急に激しく動き始めたのである。
その激しさに後押しされるようにして、未緒は有月を突き上げた。
「んんっ……お、おおおっ……!」
二人分のピストンを受ける有月の背が、弓なりに反り返る。
「いっあ……っああ!」
有月より一足早く、未緒が達した。
「っ……!」
熱いほとばしりを受けて、有月の全身が痙攣する。
「う……!」
眉を歪めた直人は、未緒の中で打ち震えた。
「あ……」
息を弾ませながら、二人は肉棒を抜き取る。
その間に呼吸を整えた有月は、にっこりと微笑んだ。
「感謝するぞ。二人共」
「……風が出てきたな」
有月を残して外に出てきた時、直人の第一声はそれだった。
「行こう。この時期、夜風は冷える」
「ええ……」
未緒は詳しい事を詮索せず、夫に従う。
高台を離れる前に、未緒は一度だけ桜を振り返った。
深い結び付きを分かち合いながら長い時を生きてきた古木が、少しくすんで見える。
どことなく切なくなって、未緒は目尻を押さえた。
「……行こう」
低い声で、直人が言う。
まるで泣きそうな声だと、未緒は思った。
――坂道を下る途中、直人が手を蠢かせる。
人間を遠ざけておくための結界が解かれると、途端に下の方からざわめきが聞こえてきた。
ザアッ……!
突然強い風が湧き起こり、桜の梢を揺らす。
舞い散る花吹雪に、未緒は息を飲んだ。
(……う)
微かに聞こえた声に耳を疑い、高台の方を見上げる。
(ありがとう)
「有月、さ……」
未緒は首を振り、隣にいる直人へ頭をもたせ掛けた。
「行こう……ここは、もっと寒くなる」
新婚旅行を兼ねた家族旅行は、幕を閉じた。
「いいお湯だったわね」
助手席に座った操が、のんびりと言う。
「もちろん。いい旅行だった」
後部座席にいた伊織が、そう言って賛同した。
「そうね。まあまあかしら」
伊織の横に座る由利子は、そんなそっけない答を出す。
「お母さん」
抗議らしき意味合いを込め、未緒が声をかけた。
「そうね。満足すべき旅行だったわ」
母が訂正するのを聞いてから、未緒は直人へ視線を転じる。
今は光をあやしているせいか、滞在中顔に張り付いていた憂いを含んだ表情は、今の所は見受けられない。