runaway〜ある少年の逃避行〜-2
rumor〜勘違いの噂〜
「逃げるなよ!」という『たっちゃん』他多数の人々の声を背にして、教室に戻る。教室に入ると、こちらを見てひそひそ話していた。何か居心地が悪い。自分の席に戻り寝るふりをして、そのひそひそ話に耳を傾ける。
「あいつ、巴さんから告白されたらしいぜ」
「ああ、そうらしいな。あいつのどこが良いんだろな?」
ここの学校、噂広がるの早っ! まだ、あれから一分もたってないのに……。
まあ、そんなこんなで放課後が来てしまった。痛い視線を浴びながら屋上へ向かう。
request〜理解不可能のお願い〜
屋上に着くと、既に生徒会長が来ていた。
「まあ、女の子を待たせるなんて最低ですよ」
「はあ、すいません」
呼び出しといて、それはないだろ、と突っ込みたい所だが、批判がいっぱいくるだろうから止めておこう。
「それで、お願いとは?」
「あなたにこの学校から出て行ってもらいたいのです」
えーと、この女は何言ってるんだ。
「聞き間違えですかね? 出ていけ、と聞こえたのですが?」
「聞き間違えではないですよ。本当にあなたが邪魔なのです」
ボクが一体何をしたっていうんだ!
「おや、狐に噛まれたような顔をしていますね。なんですから、理由もお教えしましょう」
狐につままれたように、じゃないのか? この人、本当に成績優秀なのか?
「私は、この学校の支配者になるのです。いや、既になっているのですが、あなたが居る限りここの真の支配者になれないのです」
支配者ってなんスか? なんかのゲームのボスですか?
「あなたが私の事を慕ってくださらないと、この地雷火字(じらいかじ)高校に平和は訪れないのです」
余談だが、――昔聞いた話だと――この高校の由来は『地震・雷・火事・親父』からきているらしい。それらの次に怖くなってほしいということから名付けられた、との話だ。まあ、怖くなってどうするんだ、と思うのだが……。
「とにかく失礼します。こんな事に付き合ってられるほど、暇じゃないんです」
runaway〜逃避行の始まり〜
そう吐き捨て屋上を出ていく。ひどい事言いすぎたかなと反省しながら、三階へ降りるための階段の踊り場で、謎の集団を見つけたというか嫌でも目に入る。謎というより不気味だ。ピンクのハッピ、額には『LOVE巴』と書かれたハチマキを着ていた。パッと見ただけでも、十数人いる。正直気持ち悪い。その中の代表っぽい――とてつもなく身体がでかく、いかつい顔の――人が話し掛けてきた。
「お前、巴さんはどうしたッ!!」
「置いてきた」
「何ィ!! どうしてだ! どうして、置いてきたんだ!」
「え、だって――」
カツーン、カツーンと階段を降りる音と共におそらく生徒会長が降りてくる。どうやら泣いているようだ。