投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

隣人のち恋人、ときどき変人。
【幼馴染 恋愛小説】

隣人のち恋人、ときどき変人。の最初へ 隣人のち恋人、ときどき変人。 5 隣人のち恋人、ときどき変人。 7 隣人のち恋人、ときどき変人。の最後へ

く・さ・れ・え・ん-1

そいつの事を好きになるのに、そんなに時間は要らなかった。
同じ高校、同じクラス、前後の席、そして同じ部活。
周りは僕らを”腐れ縁”と呼ぶが、
内心、そんな呼ばれ方したくないと思ってる。
だって嫌じゃない?
”腐れ縁”だなんて、どうみたって字面が汚い。
もっと他の呼び方があるんじゃないかな。
僕は笠井瀬里奈とのそんな繋がりを、何より幸せに思ってるんだから。

* * * * *

「また同じクラスだね、神楽」
「これが3年も続いたなんて、なんかスゴいな」
昇降口の前に張り出されたクラス割り。
新学期の恒例行事である。
全学年の分が張り出されているだけあり、
昇降口の前は長蛇の列で、確認出来る距離まで近づくのに一苦労であった。
「明美、また一緒だねぇ」
「あーあ、担任、体育のゴリ男かよっ」
「うわっトイレに行くのめんどいじゃん、このクラス」
辺りから様々な声が聞こえ非常にやかましい状況だが、
これも毎年のこと、全く気にならない。
それに僕だって本当は叫びたいくらい嬉しいんだから。
そんな事を考えてる時だった。
瀬里奈が虫の鳴くような声で何やら僕に呟いたのは。
「…あた……糸………してね」
「え?なに?」
聞き取れなかった僕は彼女になにかと聞き返したが、
なんでもない、とあっさり誤魔化されてしまった。
少し不機嫌な顔をした瀬里奈だったが、
その時の僕はその意味も理由もわかるはずなく、
そのまま教室へと歩き出す彼女の後に付いていくしかなかった。

クラス替えはしたものの、学年のほとんどのヤツとは顔見知りである。
確かに新鮮な感じはするが、ここへ入学した時のような心境には、やはりなりようがない。
僕のクラスの担任は、『ヒゲっち』の愛称で親しまれ、
ウチの職員にしては珍しく生徒に親身になってくれると評判の国語の教師で、
さっそく無難なジョークでHRの雰囲気を和ませていた。
「ねぇ、担任、ヒゲっちで良かったね」
いつのまにやら機嫌を戻した瀬里奈が、僕の背中を2度ほどつついた。
席替えをする前の席は、名前の順になるため、毎年この前後関係なのだ。
「そだな、でもあの無難なジョークを毎日聞かなきゃかと思うと…なぁ」
「ふふっ、それはそうかもだけど」
そう言ってはにかむ瀬里奈の顔。
僕の大好きな瀬里奈の笑顔は、どんなピンチな状況よりも僕の頭をパニクらせる。
もしも瀬里奈が僕のこと好きなんだったら、この笑顔を独り占めできるのに。
「ほう、それなら無難でないジョークとやらを教えてもらおうかな、神楽」
その時、不意に頭の上で野太い声がした。
瀬里奈が「佑規、前っ、前っっ」と囁いた時はもう既に時遅し。
ぼんやり彼女のことを考えてた僕は上手く頭を切り替えることが出来ず、
新学期初日から国語準備室の掃除をやらされる羽目になった。
瀬里奈からは「せっかく教えてあげたのにどんくさいなー、佑規は」と小馬鹿にされるは、
友人からは「どーせ笠井の笑顔見てボーっとしてたんだろ」と図星を指されるはで、

踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだと、この時ほど痛感したことはなかった。
…っていうか瀬里奈も一緒に喋ってたのになんでオレだけ?苦笑


隣人のち恋人、ときどき変人。の最初へ 隣人のち恋人、ときどき変人。 5 隣人のち恋人、ときどき変人。 7 隣人のち恋人、ときどき変人。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前