く・さ・れ・え・ん-4
「なぁ、笠井」
「…なぁに?」
「瀬里奈って名前良いよな」
「うんにゃ、パパとママに感謝だよ。…佑規だっていい名前じゃん」
「オレも感謝してるよ、2人に」
「…それで?」
「オレ笠井のこと好きだからさ、今度からは瀬里奈って呼びたいなと思って」
「…………。」
「…。」
「ねぇ」
「ん?」
「…それって今この体勢で言わなきゃダメだったのかい、神楽くん?笑」
「…ごめん。笑」
僕の言葉を微笑みながら聞いてた瀬里奈の目は、心なしか潤んでるように見えた。
「…それってサ、アタシも神楽のこと佑規って呼んで良いってことだよね」
「笠井が望むなら」
「じゃあ佑くんが良いな」
「なんで」
「なんか可愛いぢゃん、そっちのが」
「好きに呼んでよ」
「あー、なにその投げやりな感じは。…か弱い乙女に告白の決意までさせといて」
「…へ?」
「アタシもね、今、神楽に好きって言っちゃおうかなって思ってたカラ」
「……?」
「そんな顔しないでよ。アタシが恥ずかしくなっちゃうじゃないのよぉ」
「笠井はオレのことそーゆー風に見てくれてないと思ってたけどな。
ほら、オレら、周りから見たら”腐れ縁”らしいから」
「その呼び方、なんか嫌な感じだよね、失礼ったらありゃしない。
……でもほんとに良かった、嬉しかったよぅ…」
「お待たせ…、瀬里奈」
「…うん」
そう言って壊れそうなくらい綺麗に笑った瀬里奈の顔を、僕は一生忘れないだろう。
そして、この”腐れ縁”で繋がった彼女とずっと一緒にいたい、僕は素直にそう思った。
”腐れ縁”とやらにも少しは感謝しなきゃいけないな。笑
僕がこの世から消えるその瞬間まで、この素敵な縁がずっとずっと途切れませんように…。