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隣人のち恋人、ときどき変人。
【幼馴染 恋愛小説】

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く・さ・れ・え・ん-2

* * * * *

「ただいま」
部活でクタクタの体を引きずり、ボロッちぃアパートのドアを開けると、
見飽きた顔と見慣れた顔がひとつずつ僕を出迎えた。
この馬鹿姉貴め、また秀にぃに迷惑かけてるのか。
…まぁ、いつもの風景ではあるんだけど。
「おかえりー、佑規っ」
「お邪魔してるよ、佑くん」
「ただいま」
こぢんまりしてて眼鏡をかけてる方が見飽きた顔、つまりは認めたくないが僕の姉。

ものすごくディープな趣味をお持ちで、
僕が友達を家に連れてきたくない理由の99%を占めている。
現在は出版社のゲーム部門で働いてるのだが、
仕事と、言うよりは完全に趣味の延長と言った感じ。
この恐ろしくオタクで、恐ろしく脳ミソが軽い姉貴が、
ちゃんと会社の役に立ってるのか、はなはだ疑問である。
そしてその隣にいる爽やかで優しそうな男の人が、あろうことか姉の彼氏である、秀にぃ。
オトナリサン同士である2人が(もちろん僕もオトナリサン。)付き合い始めたと聞いた時は、
僕は驚きすぎて気を失い、気づいたら病院のベッドの上だった。
それぐらい衝撃的なことだったのだ。
なんでこんなオタク女と秀にぃみたいな人間が付き合っているのかは、
これまた、まったくもって謎である。
「ときに姉貴、レポートで忙しい秀にぃを連日家に呼んで、あなたは一体何を考えてるのかな」
「なんでよ、いいじゃなーい。秀太君がいいよ、って言ってくれたんだからぁ」
そう言って秀にぃの腕に抱きつく馬鹿姉貴。
当の秀にぃは複雑な顔をしながら僕たちのやり取りを眺めていた。
「秀にぃは優しいから誘われたら断れないんだよ、このオバカめ」
「秀太君、良いって言ったもんね、ね、ねっっ?」
良い年こいた女が何がねっねっ?だよ。
気持ち悪い。
「ははは、いいんだよ、佑くん。オレは、好きで来てるんだし」
「ほーらね♪じゃあもっかい対戦しよっか、秀太君。…佑規もやるでしょぉ?」
「やるかアホちん」
何か言い返す気力も失せた僕は、秀にぃにお疲れ様とだけ声をかけて部屋へと向かった。
冷や汗を垂らしながら苦笑いする秀にぃに、心の中で合掌。
単位落としても知ーらないっと。

最近、毎日恒例となってしまっているそんなやり取りを終え、
部屋のベッドでゴロゴロしていると、やがて秀にぃの声がドアの外から聞こえてきた。
「佑くん、起きてるかい」
「うん、入って良いよ?」
キィーと小気味悪い音を立ててドアが開く。
また油差さないとダメだな、こりゃ。
「やっと解放されたんだ、姉貴に」
「はは、まぁね、さっきはありがとう」
「ううん、大学もいろいろ忙しいだろうに秀にぃも大変だね。…で、どうしたの?」

「いや、大した用じゃないんだけどさ」
そう言うとベッドの端に腰掛け、秀にぃは意外な台詞を口にした。
「なんか悩んでることあるんじゃないの?…例えば恋愛とかさ」
「…へ?」
「『最近、佑規がボーっとしてることが多いの』って、佑香、すごく心配してるよ」

「姉貴が?」
頭の中がお花畑で出来てる姉貴が意外に僕のことにするどいのは昔からだが、
まさかこの悩みのことまでバレてると思わなかった僕は内心ドキリとした。


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