恋…後編…-7
「さっきはエラそうに言ってくれたわネ!お礼に一巳を襲っちゃう!」
亜希子は一巳のシャツのボタンをひとつ、またひとつと外していく……布を介して伝わってくる熱くなった彼女の身体。一巳の手を取ると、胸元に導き入れる。何も着けていなかった。
一巳は上半身が脱がされた……亜希子も服を脱ぎ捨てる…神々しい身体が一巳の前にさらされる。
彼女がズボンのベルトを外してファスナーを降ろそうとした時、
「何があったんです?」
一巳が亜希子に言った言葉だ。
瞬間、亜希子の身体はこわばった。
だが、すぐにファスナーを降ろして、一巳の身体を露にしようとした。
一巳は上半身を起こすと、再び亜希子に訊いた。
「亜希子さんらしくありませんよ。何を自暴自棄になってるんです?」
「何言ってんのか分からない!」
亜希子は構わず、一巳のズボンを脱がせようする。が、一巳は彼女の肩を掴んで、身体を起こして彼女の目を見ながら、
「今のアナタとはセックスしたく有りませんよ……自分で自分を傷つけるようなアナタと……何があったんです?」
亜希子は脱ぎ捨てた服をふたたび着けると、今度は一巳から離れた部屋の隅に座った。
彼女はポツリポツリと語り出した。
「…さっき……別れた彼氏から連絡があったの……もう一度やり直そうって……」
亜希子はチラッと一巳の反応をうかがった。一巳は優しく微笑みながら、続きを促す。
「…その時、一瞬だけど…私、嬉しかったの……」
亜希子の目からポタポタと涙が床に落ちる。嗚咽が混じる……
一巳はひとつため息をつくと、
「亜希子さんはどうしたいんです?」
亜希子は頭を振りながら、
「………わ…からない…」
それだけ言うのが精一杯だった。
一巳は亜希子のそばに歩み寄ると、後ろから抱きしめた。そして、やさしく髪を撫でながら、
「亜希子さんが決めて下さい。時間はたくさん有りますから……」
そして立ち上がると、「帰ります」と言って亜希子の部屋を後にした。プレゼントのストールを置いて……
― エピローグ ―
ーひと月後ー
「ちょっと藤野君!」
「あ、ハイ」
一巳の居る事務所に亜希子の怒号が響いた。
「先日提出した旅費の清算書、どういう計算してるの!ちょっといらっしゃい」
亜希子は席に座っている一巳の手を引っ張ると、総務へと連れて行き、こんこんと説明する。