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恋…後編…-4

「ホント……素晴らしかった…」
一巳はそんな亜希子を見て(かわいらしい)と思った。

「そろそろ帰ります。今日はありがとうございました」
一巳はそう言うと立ち上がる。

マンション下の駐輪場まで見送る亜希子。一巳はギアをセカンドに入れると、

「今度は僕が誘いますから」

そして、(おやすみなさい)と言って亜希子の肩に両手を置くとキスをした。

「な、何?」

「今日の亜希子さん、いつにも増してかわいかったですよ」

一巳の言葉に顔が火照る亜希子。だが、暗闇だったため一巳には見えなかった。

「じゃあ!」

彼はマンションから少し離れた場所までバイクを押してからクラッチを切った。


ー翌日曜日ー

一巳は一人、似つかわしくない場所にいた。百貨店の婦人服売場。
初めて貰った冬のボーナスで亜希子に何かプレゼントしたくて色々と見ている。だが、彼女に合うモノがなかなか見つからない。どうしようかと困った時、一巳は思い出した。いつか彼女と地下街を歩いた日の事、ある店の前で彼女が言った。

(私、服はほとんどココで買うのよ)…

(アソコなら…)そう思った一巳は、地下街へと急いだ。
その店は、確かにトラディショナルな服をカジュアルにアレンジしてある。おまけに上質な素材を用いてるようだった。

(これは良いな)とあたりを付けたのはカシミヤのストールで、今年から出回り始めたモノだ。が、値札を見て驚いた。

「3万2千円……」

一巳はしばらく思案した。亜希子はよくこぼしてた。

(私、冷え性でこり性だから冬になると身体が冷えて、よけいに肩がこるの)

結局、彼女の喜ぶ顔が見たいという思いが勝り、ソレを持って係に(プレゼント用に)と言った。

クリスマス・イヴまで、残り7日の事だった……

「エッ、残業ですか!?」

一巳はつい思った事を顔に出して上司の小門に言ってしまった。

「うむ、急な事ですまないが…」

小門も察してか、部下である一巳に対してすまなそうに頼んでいる。

確かに12月24日の今日、誰もが残業などしたがらない。恋人たちはもちろんだが、子供達も冬休みとあって、家族団らんには絶好の日とあって皆、早く仕事を切り上げる。

一巳も皆と同様に亜希子と過す約束をしていた。しかし、これも新入りである悲しさ。ならば、と出来るだけ早く残業を終わらせるべく、明日の会議資料の作成にとり掛かる。

しかし、なかなか上手くいかない。分かり易く、なおかつポイントをついた資料に出来ない。


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