彼女は小説家をめざした。-1
部屋のフローリングに座り込んで十数枚のプリント・アウトされた原稿に目を通すオレ。そのとなりには心配そうな表情でオレの顔を覗き込む理恵。
「どうかな?ユウさん…」
オレは読むのを止めずに理恵に訊いた。
「この原稿さ、どうすんの?どっかの出版社に送るの」
「……とりあえず」
「とりあえず?」
「とりあえず…パソコンの投稿サイトに送ろうかと……」
オレは読み終えた原稿をそばのテーブルに置くと、理恵を見た。
「正直な感想だったよね」
うなずく理恵。オレは一言々、言葉を選んで答える。
「理恵ちゃん、高校生だろう。だから若い時にしか書けない感性あふれるテーマの方が良いと思うんだが…」
オレの言葉に彼女はうつ向いてしまった。
紺色のブレザーの制服。そのスカートから見える健康的な脚に黒いソックスが良くマッチしている。ショートカットの髪にセル・フレームのメガネ。最近の高校生からすれば地味にも見える。
なんでこんなマジメそうな娘が官能小説を……
「ユウさん、具体的に何が悪いんですか?」
(どうしようか?ハッキリ言うべきか?)
オレは悩んだが、この際、ハッキリ言う方が彼女のためと思い、
「理恵ちゃん、セックスした事は?」
理恵は首を横に振る。
「じゃあ自慰は?」
「ジイ?」
「オナニーの事さ」
彼女は頬を赤らめて"イイエ"と答える。
(やっぱり…思った通りだ)
オレはため息をつくと、
「ストーリーはよく書き込んであるよ。だけど肝心のセックス描写が、ただ性器の隠語や擬音をバラまいただけだ。これじゃ興奮しないよ」
「だって、それは…」
「そう、経験ないからさ。特にセックスなんていくら想像や感性をめぐらせて書いても必ずおかしな箇所が出る。そうなると読み手も気持ちが萎えてしまう」
そう言ってオレは理恵の背後にまわると、ブラウス越しに胸を触った。
「ひっ!…何を」
理恵はオレの手を払い退け、逃げようとする。オレは右手で彼女の腰を抱くと引き寄せた。
左手でゆっくりと理恵の胸を揉む。甘い汗の匂いが漂う。しばらく彼女を責め続けるうちに、身体から緊張感が無くなるのが分かった。
オレは右手の力を抜いた。しかし、理恵はもう逃げなかった。