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雪の少女
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雪の少女-2

「た、確かに近い…ってか気付かなかったし…。一体いつの間に…?」
 今純はアパートの自分の部屋にいる。そして、隣の部屋の前には小雪がいる。そう、小雪の家は純の部屋の隣の部屋だったのだ。
「ね、言ったでしょ?これでいつでも会えるね。」
 小雪は嬉しそうに言った。
(うわっ。結構かわいい…。)
 純は小雪の笑顔を見て、思わずドキッとしてしまった。
「あ、雪だ…。」
 小雪の声に純が外を見ると、空から雪が降ってきていた。
(そういやこの感じどっかで…。)
 そんなことを考えていると、小雪が純の方に近づいてきていた。
「ねぇ、純君の部屋見たいんだけどいい?」
「ん、あぁ。いいけど汚ねぇぞ?」
「いいよ、別に。」
 小雪に言われて、純は自分の部屋のドアを開けた。

「へぇ〜、ここが純君の部屋か〜。」
 小雪は純の部屋をキョロキョロ見回していた。小雪の後に入ってきた純は自分のベッドに目をやると、ふと、あの夢の中に出てくる『雪の少女』のことを思い出した。さらに純はあることに気付いた。
「天野さんって、あの女の子に似てる…。」
「ん?」
 割と呟くような声だったが、小雪には聞こえていたようだ。
「あ、いや。天野さんが俺の夢の中に出てくる女の子に似ててさ。雪の中にいる女の子でさ。冬にしか見ない夢だけど、今じゃあちょっとした楽しみさ。」
 純が恥ずかしそうに話していると、小雪は純の顔を覗き込んでいた。
「そんなに楽しみにしてくれてるの?」
「まぁね。言っちゃえば僕の初恋の人だからさ。……ん?」
 純のそれまで赤かった顔が元に戻り、純はまたあることに気付いた。それは不審めいたものでしか無い疑問だ。
「ねぇ、天野さん?さっき『楽しみにしてくれてる』って聞いたよね?してるとかだったらわかるけど、『くれてる』ってどういう事?」
 純がそう言うと、小雪は微笑みながら純の胸に飛び込んだ。

「!!ち、ちょっと、天野さん?!」
 小雪は小柄だったため、体力に自信が無い純でも受け止めることができた。
「言ったよね。もうすぐ会えるからって。私だって、会うの楽しみにしてるんだから。」
「楽しみって…え?まさか…いやそんなはずは…。けど、まさか君は…『あの子』なのか?」
 いささか混乱した後、純は頭を落ち着かせ、小雪に尋ね直した。
「天野さん、君は俺の夢に出てきた『雪の中にいる女の子』なのか?」
「やっと気付いた。もう…気付くの遅いし鈍すぎよ。」
「ちょっと待ってよ。何で夢に出てきた人が俺の目の前にいるんだ?」
「だって私、元精霊だもの。」
 小雪の言葉は純には理解できなかった。
「は?精霊って?」
「雪の精霊よ。いつも降ってたでしょ?」
「確かに降ってたけど…、てことは、今外で降ってる雪も、天野さんが降らしてんのか?」
 小雪は残念そうに首を横に振った。
「この雪は違うわ。だって私、もう精霊じゃないもの。」
 小雪は説明を続ける。
「私が純君の夢に出たのは、私が精霊だったから。逆に言えば、精霊はとは夢でしか会えないのよ。現実に会うには精霊を辞めて人間にならないといけないの。」
「そんなのってできるのか?」
「現にそうなってるじゃない。でも寿命が短くなるのよね〜、人間になると。」
「どのくらい短くなるんだ?」
「う〜んとね〜…1000分の1ってとこかな?」
「え?そんなにってまずくないか?」
 予想外の短さに、純は驚きの声をあげた。
「大丈夫よ。精霊が長生きなだけ。1000分の1って言っても、普通の人の寿命と変わらないし。」
「けど、そこまでして何で…?」
 純が尋ねると、小雪はまた抱きついた。
「…冬にしか会えないのは辛いから…。ずっと純君の傍にいたいの…。ダメ?」
 ダメなわけないだろう、純はそう思った。夢でしか会えなかった少女が、自分の好きな少女が、自分の傍にいたいと言ってくれているのだから。
「ありがとう、嬉しいよ。俺も天野さん…、いや、小雪ちゃんの傍にいたいよ。」
 純は小雪の背中に腕を回し、愛しい少女を包み込んだ。
「よかった…。」
 小雪も先ほどよりも強く、純に抱き付いていた。

 今までは冬以外の季節が好きになれなかった。これからも、一番好きな季節は冬だろう。けど、他の季節も好きになれる気がする。愛しい人が傍にいるから。純はふとそう思うのだった。

END


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