壁の向こう-1
深夜2:00――…
「…あっ…ぁ…ぁん…」
壁越しに聞こえる甘い声。
皮肉にも反応を示す僕の下半身。
「ぁ…はっ…哲也……ぁん…」
兄貴の名を呼ぶその声に、胸が締め付けられる想いがする。しかし、その切ない想いとは裏腹に熱を帯びていく身体。
「あっ…あっあっ…や…駄目、イキそぅ…あっ…ぁあ…」
少しずつ高まっていく
壁の向こうの君の声。
気付けば、忙しく動いている僕の右手。
君の声が頭に響く
君の豊かな胸と
君の熱いナカを想像し
徐々に早まる右手の運動
目を閉じれば
懐かしい君が浮かんでくる。
「…ぁ…や、イッちゃう…あっあっ…イクっ!……やぁぁぁああああっ!」
「……………ッ…!」
同時に果てた僕。
白い欲の塊を自ら処理しベッドに入る。
目を閉じれば、君の笑顔。
この胸の痛みを、どうすれば良いのだろうか?誰に痛みをぶつけても、君はもう戻ってこない。
「「…美香…」」
壁の向こうとこちらがわで
二人の声が重なった。
君を呼ぶ声は、
こんなにも似ているのに。
end