トシキ@-8
「アタタタタタタタタタタ!!」
トシキの奇声と共に繰り出されたその拳は、まぎれもなく高速拳そのものだった。
「弟子よ・・・・上出来だ。行って来い!!新たな旅立ちがオマエを待っている!!」
「師匠・・・・・」
二人は体を抱き合い、お互いの体温を確かめ合った・・・
オヤジに別れを告げると、トシキは人ごみあふれる村の市場の中へと消えていった。
(ざわざわ・・・・)
村市場は活気に満ちあふれていた。
トシキは人の渦に巻き込まれながら市場を歩き回った。
「へへっ2回も触れたぜ」
トシキはずでに性犯罪者予備軍である。
「キャアアァァアァアア」
するとその時、突然女性の叫び声が聞こえた。トシキは一瞬心臓が止まったが、その叫び声が自分に向けられたものでないことに気がつくとすぐに意識を取り戻した。
「へへっ、許してくれよおねえちゃん・・・悪気はなかったんだ。」
騒ぎが起こっているほうに目を向けると、女性1人が若い大男3人に囲まれていた。
「こ、この人、私の胸を触ってきたんですぅ・・・・」
女性は回りにむかって必死に訴えようとしていた。が、誰も反応しなかった。
回りの人間は、大男3人を相手にできるはずがないと悟ったようである。
「胸触ったくらいで大げさなんだよ・・ふひっ・・・・減るもんじゃねえだろ・・・ふひっ」
全くそのとおりだ。トシキはそう思った。
そして女性の顔を見てみると、その顔は今をときめくガッ●ーにそっくりだった。
それを見たトシキは自然に前へと歩みだし、男の胸ぐらをつかんでいた。
下心全開、半勃起だった。
「キサマら恥ずかしくないんかぼけえええぇぇ」
トシキはこの世の物とは思えない顔をして男をにらみつけた。
すると男たちは、なにやら互いに目で合図を送っているようだった。
「おい、こいつやっちまおうぜ。警備の奴らは外からの侵入者に目を配ることにやっきになってる。ちょっと騒ぎ起こしたくらいじゃ気づかねえだろ。」
男たちの一人がそう話すと、一斉にトシキに殴りかかってきた。
「馬鹿め・・・トシキ様をなめやがって」
トシキは、先ほど覚えたばかりの光速拳を繰り出そうとしていた。それは、RPGで覚えたての技を雑魚キャラに試し撃ちする感覚に近いものがあった。
(いいか、トシキよ。この光速拳はピンチの時にこそ使うがいい・・・闘いとは駆け引きなのだ!!)
オヤジの言葉が脳裏を横切ると、トシキは一瞬動きを止めた。
(バキッボコッベキッ)
そう思ったとたん、トシキは男たちに殴られた。
「アタタタタタタタタタタ!!」
トシキはなりふりかまわず男たちに光速拳を繰り出した。
男たちは皆吹っ飛び、近くの屋台に突っ込むと意識を失っていた。
(パチパチパチ)
人ごみの中からサングラスをかけた、陽気な黒人が現れた。