トシキ@-7
「ちっ・・・門に鍵がついてやがる・・・・・」
鍵は暗証番号付きであったために、門を破壊する以外に脱出の方法は考えられなかった。
「トシキスーパーウルトラメガトンサンダー逆転サヨナラパンチ!!!!!」
トシキは門に向かって全力でパンチをはなった。
(ドゴオォォン)
門は壊れず、トシキは手首を捻挫した。
「かっかっか!その門は周りは木製でできているが、中には鉄板が入っている。そんな赤ちゃんパンチが通用するはずなかろうがっ!!」
なんと、トシキの後ろには店のオヤジが立っていた。
「あわわわわわわ、す、すすすいましぇんですいた!!!!!」
トシキは体全身から冷や汗が吹き出てくるのを感じた。
「まあ安心せい。こういうことになるのは想定の範囲内だった。お前はまだまだウチで働いてもらうからな!!がっはっはっはっはっは」
オヤジには少し酒が回っているようで、幾分顔はほころんでいた。
それを見てトシキは少し安心した。
「それにしてもお前、なんだそのパンチの打ち方は。最近の若い者は武術なんかも習わなくなったのか」
メタボリックみたいな腹してるオヤジが偉そうに・・・・トシキはそっとつぶやいた。
「あぁ!?誰がメタボリックだって!!?ワシはこう見えてもな、村の武術大会で10回連続優勝したこともあって今では伝説とまで言われている。先祖代々、武術家の家系でな」
オヤジはそういうと、上着を脱ぎ上半身裸になった。
びっしりと張り詰めた胸毛と腹毛の量が、オヤジがただ者でないことを物語っていた。
「な、何をする気だ!!?」
「まあ見ていろ。」
そう言うと、オヤジは壁に向かってこぶしを構えた。
「アタタタタタタタタタタタ!」
オヤジはこの世の物とは思えないほどの奇声を発し、壁に向かってパンチをくりだした。
(パパパパパパパパパパパパパパ!!)
「み、見えない・・・・・・」
そのパンチはトシキの肉眼でとらえることが不可能だった。
「これが伝説の“光速拳”!!ワシくらいになると一秒間に23発のパンチを繰り出すことができる。ま、速さだけが自慢じゃないのだがな」
オヤジが壁を指差すと、そこにはこぶしの跡がしっかり23個ついていた。と、その瞬間、壁は音を立てて崩れだした。オヤジはコンクリートの壁を破壊したのだ。
「か、かっけえ!!オヤジ!・・・・い、いや、師匠!!俺にその光速拳の打ち方を教えてくれ!!!」
トシキは目を輝かせ、オヤジにつめよった。
「師匠・・・か・・・・・。いい響きだ。よし、教えてやる!!」
その晩、気をよくしたオヤジはトシキに修行をほどこしてやった。
トシキの修行は朝まで続いた。
(チチチチ・・・・)
小鳥のさえずりと共に、時計の針はちょうど午前7時をさした。