聖なる夜に…-7
[そう……良い笑顔だ。いつもそうしていろ。そうしていれば"不幸な事"は逃げ出していくから]
敦は沙耶に含めるように言った。が、それは自身に対しての言葉でもあった……
[ヨシ!今からメシを喰いに行くぞ。最高のイタリアンを…]
沙耶は一瞬、不安な顔をして、
[エッ、私テーブル・マナーなんかよく知らないよ]
敦は意に介した様子も無く、
[気にするな。昨日、言ったろう。"汝、大いに呑み食い歌え!人間、いつ終わりが来るか解らぬのだから"ってな!自分が美味しかったら良いんだよ]
沙耶は敦の言葉に安心したと同時にある疑問が湧いた。有名なレストランを昨日、今日予約出来るのか……
[ねぇ、よく1日で予約がとれたわね?]
と沙耶が訊いた直接、敦の顔が一瞬歪んだ。
[………予約は2ヶ月前にしてたんだ……]
[それって…]
[ああ…数日前、女と別れた…]
バツの悪そうに喋る敦の顔を見て、沙耶は思わず吹き出した。
[アハハハ…じゃ、私は"彼女"の代役なのね]
[まぁ……そんなトコだな…]
また二人は声にして笑う。すると、空から雪がチラチラと舞い降りてきた。やがて雪は深々と降り出した。敦は着ていたコートを脱ぐと自身と沙耶の頭から被った。沙耶の身体に敦の腕が巻き付く。
[最高のクリスマスになったわ]
[オマエ達は"休み"だからな。オレはこのままじゃ会社に連泊だ]
[泊まりにきてあげましょうか?]
[10年後にな…子供にゃ興味ないよ]
[その子供を襲ったのは誰!]
["大人"を主張しながら、いざその時に逃げたのは?]
雪は二人を隠すように降り続いた…全ての出来事を清めるように……
…[聖なる夜に 完]…