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聖なる夜に…
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聖なる夜に…-2

[全く夜なのになんて渋滞なんだ]
敦はノロノロと動くクルマの群れを苛立たしく思っていた。しかも、外の気温はグングン下がっているのかコートを着ていて暖房を入れているにも関わらず、身体に悪寒が走る。
ふと、敦はフロント・グラスを見る。ポツ、ポツと、雨跡が確認できた。"雨か?"と彼が思った後、チラチラと白いモノが上から舞い落ちてきた。

[雪……か。まさにイベント日和だな]

全てを消し去る"純白の訪問者"を寒い車内で眺めていた敦。"明日の朝は大渋滞だ"と思いながら、"会社に泊まった方が楽だな"と考え、先の交差点で曲がって戻ろうとした摂那、右手のコンビニの外に奇妙な光景を見つけた。
どう見ても中学生位の女の子が、これまた場違いな軽装でただずんでいる。敦は右折しながらコンビニの駐車場に入る。
クルマから降りながら彼女を見る。すると、彼女も敦が気になるのかジッと見つめていた。彼は夜食や朝食を買い込む。ついでに雑誌や酒も…それらを購入して店を出てクルマに戻るよう歩いていると、さっきの中学生はずっと見ていた。
敦は荷物を後部座席に置くと、彼女の方を向いて、

[帰る場所が無いのか?]

そう伝えた。しかし、彼女は身をこわばらせて敦の声を訊いた。
敦はさらに、

[明日朝までなら…オレのパッド(寝ぐら)に連れてってやるが……どうする?]

彼女はようやく身体を動かしクルマの前に立った。寒さのためか身体は震え歯の根が浮いていた。敦はそれを見ると、

[クルマに乗ってろ。すぐ戻る]

と言って敦は再びコンビニに戻ると何やら買い求める。女の子はそれを見ていたが、目の前の暖かさに我慢が出来なくなったのか、クルマの助手席に滑り込んだ。
敦が買い込んでクルマに戻ると、彼女を乗せて会社へと戻った……


敦は会社駐車場前で女の子に"頭を下げろ"と隠れさせて、警備員に"大事な資料を作り忘れた。今日は徹夜するから"と言って、クルマを駐車場に停めた。そして、彼女と共に会社の仮眠室に連れて行くと、中からカギをかけた。

仮眠室は、備え付きのワン・ルーム・マンションと遜色ない程の豪華さだった。
部屋のエアコンを入れたがなかなか暖まらない。まだ震えている彼女に向かって敦は、

[右手にシャワー室がある。熱いシャワーを浴びてくるんだ。寒さが和らぐ]

彼女は言われるままに向かう。敦は彼女を目で追う事も無く、テレビを付けて眺めだした。
かじかんだ手足が徐々に解けていく。熱いシャワーを浴びながら沙耶は、家を飛び出してからの3時間の出来事を振り返っていた。耐えきれない寒さ…思考が働かずにココに来てしまった…あの人は悪い人?あんな口調の人間。普段なら絶対無視するのに…今日はココに止まって明日からどうしようか……

結論は出ないままシャワー室から出ると、備えつけのバス・タオルで身体を拭いて着ていた服を身につけた。ジーンズにトレーナーだ。そして敦の居る部屋へと入って行った……


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