刃に心《第22話・人は何故、争うのか?》-8
「あっ!疾風先輩はデザート・イーグルッスかぁ!いいッスよね、デザート・イーグルは♪性能も去ることながら、そのデザイン♪もう芸術の域ッスよぉ♪」
眞燈瑠は満面の笑みで言う。だが、疾風はこういう物に詳しくないのでどんな返事をしていいのか判らない。
とりあえず愛想笑いを浮かべると、適当に目についた銃を装備していく。
「まあ、こんなもんでいいだろ」
拳銃2つと短刀を腰のホルスターに収め、肩からサブマシンガンをかける。
時計を見れば、間もなく戦闘開始時刻。
「もうすぐ始まるけど、準備できた?」
そう言って、皆を見回す。
楓は腰に模造刀を差しているだけで、それ以外に主な銃器は見当たらない。
それに対し、眞燈瑠は小柄な体にサブマシンガンや、アサルトライフルを幾つも装備している。
朧や千夜子、彼方は両者の中間程の装備。刃梛枷だけがそれに加えて、スナイパーライフルを装備している。
「OKッスよ」
眞燈瑠が代表して言った。
「じゃあ、次は作戦だけど…」
「やはり、生き残る為には、拠点を何処に置くかですねぇ」
「それなら上の階を抑えようぜ。今いる階だと下からも上からも攻められるからな」
日ノ土高校には四階建ての校舎が3つあり、【日】ような形で配置されている。
疾風達が今いるのは【日】の一番下の棒に当たる校舎の二階の教室。
「……私は一人で動きたい…」
刃梛枷が呟くように言った。
「そうですねぇ…本来ならば、戦力の分散は避けたいんですが、刃梛枷さんの能力を考えるとその方が良いかもしれません」
朧の言う通り、刃梛枷の隠密能力は集団の時よりも個として動いた方が真価を発揮できる。
「でもなぁ…」
しかし、刃梛枷は貴重な戦力である。それ以前に疾風としては仲間をみすみす危険に晒したくはない。言い澱むのも無理はなかった。
「……私なら大丈夫…」
声に抑揚は無いが、その瞳の奥には強い光が宿っていた。
「判った。だけど気をつけて」
「……うん………気をつける…」
「そういえば、これって何チームくらい参加してるんですか?」
疾風が思い出したように問い掛けた。
「ちょっと待ってください」
朧が紙を取り出す。
「全部で8チームですね」
朧がそれを疾風に差し出した。
チーム名で何処の部類なのか判るチームもあった。『〜会』などというのは千夜子に馴染みの深いところだと思われるし、忍の里の名をチーム名にしてあるところは疾風や朧が詳しいだろう。