刃に心《第22話・人は何故、争うのか?》-7
「リーダーは疾風さんですよ」
朧はにっこりと笑った。朧がこういった笑顔を見せる時は拒否や拒絶、文句や苦情は一切負いませんといった時である。
疾風は嘆息して黒子から真紅の帯を受け取った。
『それがリーダーの証です。チームの全滅、またはリーダーがやられた場合、そのチームは脱落となります。
さて、此処まで長々と説明してきましたが、判りましたか?ドゥーユーアンダスタン?』
最後の英語が若干気になったが、特に理解できなかったところはない。
『では、皆さん理解して頂けたようですので、これより30分後のチャイムで開戦と致します。その間は作戦を練るのも良し、武器を選ぶのも良し、トイレに行ってきても構いませんが遅れないようにしてくださいね』
声が切れた。同時に黒子達も速やかに闇へと消えていく。
「では、作戦会議と参りましょう。まずは戦闘準備からですね」
朧がそう言った途端、武器の収められた箱に眞燈瑠が飛び付いた。
蓋を開き、身体半分を箱の中に突っ込むようにして中身を確認し始める。
「S&Wにブレンテン♪レイジング・ブルにグロッグ♪うっは〜、89式小銃にカラシニコフ自動小銃まであるッスよぉ♪」
ポカンとした疾風達とは対照的に眞燈瑠は恍惚の表情で武器を次から次へと箱の外へ出していく。
「モデルガンとは思えない重量と質感…いやぁ、いい仕事してるッスねぇ♪」
まるで子供のように眞燈瑠ははしゃぐ。
「先輩、どうしたんですか…アレ?」
「眞燈瑠さんは重度の兵器マニアなんです」
朧は横目で眞燈瑠を見た。
眞燈瑠は相変わらずうっとりと銀色の銃を構えている。
「とにかく、それは置いておきましょう。今は作戦を練ることが先決です」
朧はそう言うと箱に近付き、幾つか武器を取り出す。
「…何か終始、流されっぱなしだな、俺…」
疾風の口から自虐的な言葉が漏れる。
しかし、もう此処まで来たら諦めるしかないのだろう。
残る3人もこれから始まる過酷で熾烈な未来を生き抜く為の装備を選ぶことにした。
「へぇ、こんなのも用意されてんだ」
疾風は短刀をしげしげと眺めた。
刃の部分は柔らかいゴムのようなもので覆われているが、それでも重量感や持った時の感触も本物と遜色無い。
「私としては助かるな」
楓が一振りの日本刀を鞘から抜き払いながら言った。
この日本刀も疾風の持つ短刀と同じ造りをしている。
「銃は肌に合わぬ」
横薙ぎから手首を返して、縦に刀を振るう。空間を二度裂くと腰に提げた鞘に刀身を納めた。
「でも、やっぱり接近戦用の装備だけじゃ心許ないと思うよ」
疾風はそう言いながら、銃を一つ手に取った。