刃に心《第22話・人は何故、争うのか?》-3
「でも、本当に凄かったよ」
疾風は眞燈瑠の方を向いて言った。
「いやぁ♪でも、疾風先輩には敵わないッスよ。千夜子先輩に銃を突き付けた時、疾風先輩、袖口に刃物か何か、落としたッスよね?」
今度は疾風が決まりが悪そうな顔をする。
「6人目は決まりですよね?」
朧がにっこりと笑う。誰からも反論は無かった。
「じゃあ、最後の一人はどうすんだ?」
「疾風さんは何方か、出ていただけそうな方をご存知ないですか?」
朧に問われ、疾風はしばし難しい顔で虚空を睨む。
だが、その顔はすぐに申し訳なさそうなものに変わった。
「…すみません。思い付かないです」
「そうですか…皆さんはどうです?」
朧が楓達に問い掛けた。
しかし、皆、とりあえずは悩むものの、これといった発言は無い。
「これは難航しそうですねぇ…」
朧は溜め息のように呟いた。
「仕方ありません。一度、疾風さんの家に戻って作戦を練り直しましょう」
◇◆◇◆◇◆◇
一行が疾風の家に戻ると彼方が玄関前で携帯を弄っていた。
「…何で彼方が?」
疾風が呟いたのとほぼ同時に彼方が疾風に気付く。
「よぉ!おぉ、朧先輩もいたんですか!ちゃ〜す!今日もお美しいですね♪」
「こら待て。何の用事だったんだ?」
へらへらした顔で朧に駆け寄ろうとする彼方を引き留め、問い掛けた。
「へっへっへ♪ジャ〜ン♪」
すると彼方は嫌らしく唇を歪め、疾風に一枚の紙を突き付けた。
黒一色に染まったその紙は、今日何度も目にしたことのあるもの。
「な、何で彼方が!」
思わず疾風は言った。他の者も声こそ出していないが、顔は驚愕の表情を作っている。
「お、知ってたのか?」
「何で彼方がそれを!?」
「ん?何かさ、昼頃に家のポストに入ってた」
「それ…読んだのか?」
「ああ。よー判らんけど、サバゲーがあって賞品が温泉湯煙混浴の旅なんだろ♪」
疾風はほっ、と安堵の溜め息を吐いた。
書いてもいない混浴を勝手に連想する辺りに、細かい所まではよく読んでいないことが窺える。