刃に心《第22話・人は何故、争うのか?》-10
「どうだっ…」
どうだった?と言いかけて、疾風は口を閉ざした。
彼方の後ろから厳つい男達が迫ってくる。
「交戦しましたッ!」
「見りゃ判るッ!」
パンパンッ、と黒い拳銃が吠える。
だが、まだ距離は遠く、当たらない。
「待てコラァ!」
「温泉旅行はわしら〈天鳳会〉の物じゃあ!」
「腰痛持ちの組長の為に温泉旅行を手に入れるんじゃあ!」
「リウマチも治すんじゃあ!」
「組長を喜ばせるんじゃあ!」
男達は口々に叫びながら、発砲を続ける。
「千夜子殿関係っぽいが…」
「…何かいい人そうだな」
しかし、そうは言っても疾風達もただやられるわけにはいかない。
「彼方、伏せろッ!」
疾風はフルオートでサブマシンガンの引き金を絞った。
凄まじい炸裂音が深夜の校舎に轟く。
「ぐはッ!」
バタン。
一人が銃弾を浴びて、地に伏せる。
「隆二ぃい!」
「貴様らぁああ!」
男が銃口を疾風達に向けた。
「遅いッス」
だが、その銃口から弾が飛び出すよりも早く、眞燈瑠の持つ小銃が相手を撃ち倒した。
しかし、相手はまだ怯まず、疾風達に向かってくる。
「もう…情熱的な人は嫌いじゃないんですけどねぇ」
クスクスと喉を鳴らし、朧は手を振った。
闇夜に煌めく銀の忍針。突き刺さると同時に相手の身体から自由を奪う。
「あまりに情熱的なのも考えものです。後は任せましたよ、楓さん」
風が朧の傍らを通り過ぎる。その風が収まったかと思えば、既に鯉口に峰を滑らせ、楓が納刀しかけている。
チン。
短く、刀が鳴いた。
その金属音を合図としてドサリと男達が倒れた。
「相変わらず、容赦の無い太刀筋ですねぇ♪」
「…朧殿に容赦の無いとか言われたくありませぬし、誉められたくもありませぬ」
ぶっきらぼうに楓が答える。
「それは疾風さんに誉められたかった、と受け取っても宜しいですね?」
「なっ…!?」
楽しそうにニヤリと笑う朧。
「疾風さん。楓さん頑張ったみたいですから誉めてあげてください♪」
「えっ?」
いまいち理解できないが、朧のことだ。ここで断れば何を言われ、また何をされるか判らない。