秘密〜哉嗣の想い〜-7
7 秘密
〜哉嗣の想い〜
「けれど、今は何も望まない。菖が他のやつを好きなら、それでも良い。菖の好きにすれば良い。これは、菖の気持が一番だから。嫌だと言うなら、今は引いておく。でも相手の男が、・・・もし、死にそうな病気にかかっているとか、菖にふさわしくないと思ったら俺は邪魔をする。覚悟しておいて。・・ま、今のところは、何もしないよ」
ふっと笑い、戸惑っている菖に手招きする。
「・・・・何?」
恐る恐る近付いて来た菖を、ぐいっと引き寄せる。
「ひゃっ」
突然の行為に驚いたのだろう、反応ができなかったみたいで難無く腕に収まった。
「お兄様!?」
「戻ってる。」
「え?・・・あ、」
その反応に笑いながら、ぽんっと菖の頭に手を置く。
「・・・・・」
菖が驚いた様に俺を見つめる。
「ん?なに?」
「いっ、いえっ」
ぷいっ、と顔を反らされた。
「おにい、・・いえ、哉嗣さん。放して」
「嫌だ」
「!!何もしないって、」
「何もしない。ただ、暫くの間このままで居てくれないか?」
そっと頭を撫でる。
愛おしむむように・・・。
腕の中の少女が、動かなくなった。
「ー・・・ありがとう」
菖がふるふると横に頭を振る。
「今日、だけ」
特別。と胸の中で笑う。
ー愛しい。
少し腕の力を強くする。
ーこのまま時が止まれば良いのに。
馬鹿らしいけど、素直な気持だ。
「菖」
優しく話しかける。
「ー・・・・・・なに?」
少し間が空いて返事が帰ってきた。
「愛してる。・・誰よりも。たとえ、俺のことを想ってくれなくても、いい」
「哉嗣、さん・・」
す、と顔を上げる。
その顔に、笑顔を返す。
「もし、今の恋がダメになってしまったら、俺のトコに来て。ずっと待ってるから。ずっと、愛している。何よりも。誰よりも・・・」
「・・・うん」
短い返事。けれど、今はその言葉だけで満足だ。
「すまないー・・」
ぎゅっと抱き締める。細く、柔らかい感触が心地良い。
ーもし、君が一生俺を愛してくれなくても、良い。側にいてくれるだけで良いんだ。
君だけが、俺の光。
俺の想い。叶わない夢でも構わない。
ただ、君の側にいたい。
大切な君を、守りたい・・・
完
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