秘密〜哉嗣の想い〜-6
6 秘密
〜哉嗣の想い〜
その姿が、とても愛おしく、抑制が聞かなくなってしまう。
「菖・・・」
気付くと、顔を菖に近付けていた。それが当然のように、自然なように・・・・
す、と抵抗無く閉じられた菖の瞳が見える。その様子に少し驚きつつも、止まらない。
「・・・っん」
唇が重なる。想像していたのより柔らかい感触。
「・・・・帰ろう。」
体を離して立ち上がる。
「・・うん」
「はい」
立ち上がるようにと手を差し出す。
「ありがとう」
手を取り、菖が微笑む。それだけで嬉しい。
ー少しは、異性として認めてくれたのだろうか。
車を運転しながら、隣で座っている菖を見る。が、菖は窓の外を見ていた。
ー少なくとも、前よりは意識しているみたいだ。
まあ、今はまだそれ以上は求めない。
「哉嗣さん、良いかしら?」
夜、寝ようとしたところを突然の来訪者が来て驚く。いや、来ること事態は驚いてないが、人物に驚いてしまった。
「菖!?」
「駄目、かしら・・・?」
扉の前の陰が動く。
「っ、いやっ、良いけどっ」
慌てて扉を開ける。
「ごめんなさい」
扉の前の少女が頭を下げている。
「いや、寒いだろう。入りなさい」
「ありがとう・・・」
「・・で?話しは何」
部屋に入り、目の前に座った少女に問い掛ける。
「あの、・・・話さなくては、とは思っていたの。ほんとよ?落ち着いて聞いてね?」
上目使いに話しかけられる。本人は気付いてないかも知れないが、俺はその姿に一た番弱い。
「実は、私が思いを寄せている人は教師なの・・・。駄目だと分かってはいるのだけれど、・・諦められないの」
「あぁ・・」
そんな事か。
「え?」
驚いたように俺を見る。
「驚かないの?」
「いや、何となく分かる。と言うか、分かった」
何となく、あの教師じゃないかと思う。ーあの、躰の悪い男。
「そう・・、そうなの・・・」
気が抜けたように俺を見る。
「振られてしまったみたいだけどね」
ふふっと笑うと、机の上のコップを掴む。
「まだ、好きなんだな」
苦笑したように呟いた。
ーったく、俺も諦めが悪い。そこまで分かっていながらも、菖への想いは変わらない。
ーつくづく呆れるな。
「ごめんなさい。」
深々と頭を下げられる。
「私は、貴方を兄以上に思えないの。・・嫌いじゃないわ。兄だもの。幼い頃のまま、たった一人の兄妹としてとても大切」
伏し目がちに言われた。
「分かった。とりあえずは、保留にしておくよ」
「ありがとう。じゃあ、おやすみなさい」
す、と立ち上がり、部屋を去ろうとする。
「菖、忘れないで」
「?」
「俺は菖が好きだ。勿論、一人の異性としてね」
「にい、」
「けれど、」
兄様と言おうとする菖の声を遮る。