婚外恋愛(第二章)-1
時間の許される限り、二度三度と貪欲に求め合った二人。
そんな二人を引き裂くように、雅治の仕事は多忙を極め、四月からの長期出張から戻ると、約一ヵ月振りの恵子との逢瀬を控え、慌ただしく着衣を脱ぎ捨てていた。
約束していた時間は午後十一時。あと一時間後には恵子が訪れる…
熱いシャワーを全身に浴び、ボディーソープを両素手に泡立てると、己の肉体を確かめるように、首筋から順に、撫で擦るように洗いあげていた。
やがてその両素手が、胸部から下腹部へと滑り降りると、逸る気持ちが泡塗れの肉樹を半起ちにさせ、指先で優しく撫で洗えば、みるみる硬く反り起っていた。
(愛しき我が分身…)
雅治は、生命を宿したように、脈打つ己自身を見つめると、そっと笑みを浮かべながら、胸の中で呟いていた…
体操競技で鍛練された肉体は学生時代に培われ、商業デザインを学び、アパレル業界へ就職すると、独学で空間設計の世界に転身した雅治。
離婚後七年間に及ぶ独り暮らしは、菜食中心のストイックな生活で保たれ、削ぎ落とされた肉体は、バスルームに施された、頭身大の鏡の中で維持されていた。
トゥルル…トゥルル…
突如、パウダールームに投げ置いた携帯が鳴り響き、早々にバスルームを後にした雅治は、火照る裸体にパイル地のバスローブを羽織り、慌てて携帯電話を手に取った。
「恵子です。あと十分程でマンションに着くけれど、構わない?」
「僕は構わないけど、
ご主人は大丈夫なの?」
「心配いらないわ。いつもどうり、午後九時半には寝室に入ったから…」
「解ったよ。気を付けてね?」
「ありがとう。それじゃぁね…」
手短なやり取りで電話を終えると、雅治の左腕に巻かれた時計は、約束の時間には早過ぎる、午後十時二十分を差していた。
大人気ない動揺に戸惑う雅治は、冷えたミネラルウォーターを一気に飲み干し、玄関の照明を常夜灯に切り替え、リビングと、それに続く寝室を、間接照明の明かりだけに絞った。
数分後。鈍い金属音と共にドアが開け締めされ、恵子の陰影が忍び寄るように近づくと、リビングに立ち竦む雅治の姿を見つけるや、両腕を拡げながら、飛び付くように抱きついていた。
「逢いたかった…」
上ずる声で囁く恵子は、セクシーな薔薇の香りを漂わせ、その艶めかしい唇を雅治に口づけると、自ら絡み合わせるように、激しく貪りあっていた。
「あっ…ふぁっあっ…」
恵子の喉元から、艶めかしい喘ぎ声が漏れた。
「恵子。この一ヵ月、気が変になってしまいそうだったよ。今夜は枯れ果てる迄君を愛したい…」
黙って頷く恵子は、
バスローブ越しに浮かび上がる、怒跳したシルエットを弄ぐると、その硬さや大きさを確かめるように、見開いた瞳を潤わせ、ため息のような喘ぎ声を発した。