投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

エンゲイジ・リングを君に
【その他 恋愛小説】

エンゲイジ・リングを君にの最初へ エンゲイジ・リングを君に 1 エンゲイジ・リングを君に 3 エンゲイジ・リングを君にの最後へ

エンゲイジ・リングを君に-2

「そっか」

泣き出しそうにも見える笑顔で言われ、ゆきなのほうが申し訳なささで泣き出しそうだった。

「こっちこそいきなりごめんな。じゃ……」

泣き出しそうなゆきなに気付いたのか、千晴は自分の方に非があるように言って、去っていった。

その背中に、ゆきなは胸の中で更なる謝罪の言葉を呟いた。

ごめんね……。



「で、伊藤をふったことに罪悪感でいっぱいだ、と?」

帰り道に立ち寄った喫茶店でチョコレートパフェを口に運びながら、津野田百合子は半ば呆れながら言った。

「そゆこと」

テーブルを挟んだ百合子の向かい、アイスコーヒーのグラスを揺らしながら、ゆきなが答える。

千晴と別れた後、ゆきなは酷く落ち込んだ様子で百合子の待つ教室に戻った。

理由はあったとはいえ、それを隠して千晴をふったことに、彼女はかなりの罪悪感を感じていた。

そんなゆきなの様子を見た百合子が、心配半分興味半分で彼女を喫茶店へ誘ったのだ。そして、腹ごしらえをしつつ、ことの次第を聞き出して今に至る。

「そぉんなに気にすることないんじゃん?」

グラスの底のシリアルをスプーンでサクサク潰しながら、さも他人事のように百合子が言った。

「伊藤のことだから激しく落ち込みそうな気はするけどさ、あんたまで気にすることないっしょ?」

「でも……」

ふやけたシリアルと反対にサックリと言う百合子に、ゆきなは言葉を濁す。

「理由も言わずに、なんて、失礼じゃなかったかなぁ」

そこがゆきなが気にしている最大の理由だった。

「あんたねぇ、男ふる度にいちいち詳しい理由なんか言うわけないでしょ?それに、あんたの場合、理由言えるわけないでしょ?『好きな人がいる』なんて中途半端なこと言ってみなさい?どんな噂が広がるか分かったもんじゃない」

「う……」

確かに、言えない。言えないから言わなかったのだ。

「でも……」

「あーもう、この話やめぇ」

尚も食い下がるゆきなに、百合子はイライラと言った。

空のグラスにスプーンを入れ、伝票を手に立ち上がる。

「ほら、ここ奢ったげるから、帰るよ」

「う、うん」

言いながらレジへ向かう百合子をゆきなも慌てて追った。

「日田と話すときみたいにさ、もうちょっと強気でいったら?」

店を出る間際、苦笑しながら百合子が言った言葉が、ゆきなの頭にひっかかった。


エンゲイジ・リングを君にの最初へ エンゲイジ・リングを君に 1 エンゲイジ・リングを君に 3 エンゲイジ・リングを君にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前