エンゲイジ・リングを君に-19
車の中、真之は考える。
ゆきなに会ったときの第一声を。
ごめん?ありがとう?
どちらがいいだろう。
生きてきたなかで、さっきと今、どっちが迷っているだろう?
(さっき、だな)
真之は苦笑する。
助手席に置かれた小さな包み。
それをさっき、買いに行っていた。
給料2ヶ月分。
安物だけど。
今度は父親が選んだものじゃない、彼自身が選んだもの。
17歳の華奢な色白の指に似合うだろうか?
───似合うに決まっている。
指だけじゃなくて、彼女自身にも似合うはずだ。
だって今度は、愛があるんだから。
fin.