秘密〜蒼い天〜-5
5 秘密
〜蒼い天〜
「翔!!」
「和馬」
「お前、少しは人の躰をいたわれよ」
苦しそうに話す。
「わりぃ、おい、哉嗣!!」
振り向き、哉嗣を呼びだした。
「桐榮さん、勝手に呼び捨てにしないでください」
憤慨したように哉嗣が返す。
「哉嗣、くん」
「・・・お久しぶりです」
「じゃ、後は二人で。俺は帰るよ」
バイバイ、と手を振りながら翔は、駐車場へと向かった。
「菖は、最後は俺の元に来ると言ってくれた。ー・・けど、貴方は手放す気はないでしょう?」
唐突に哉嗣が話を切り出す。
「・・ああ。放せと言われても放さない」
「病気なのに?」
「・・・・」
「貴方の病気は、何なのですか?桐榮さんは教えてくれないし」
「・・・・・」
「話す気は、ナイ、ですか」
ふうっ、と溜め息をつき、
「ならば、菖を渡せない」
がたっ、と席を立つ。
「待て、」
行こうとする哉嗣を和馬の声が呼び止めた。
「・・良いだろう。教えてあげるよ。俺の病気のこと」
「ー・・・手短に。」
「・・・菖?何してるんだ?」
家に帰ると、何故か花が飾られていた。
「かず・・っ、」
慌てたように菖が振り返った。
「お帰りなさいっ。あの、翔さんから、今日は和馬の誕生日だって聞いたから・・・っ」
耳まで赤くなっている。
「ゆでダコみたいだぞ」
くすくすと笑いながら、体を抱き締める。
「和馬?どうしたの、何だか変だよ?」
ぎゅ、と抱き返してきた。
「・・何でもない」
「そう?ー・・・私、もう帰らなくちゃ。ごはん作ったから、食べてね?」
にこっと笑い、靴をはく。
「ありがと」
「誕生日おめでとう。明日、まとめてお祝いするね」
「『まとめて』?」
「あっ、や、気にしないで。じゃあ、バイバイッ」
「ちょ、あやっ、」
呼び止める間もなく駆けていった。
「何なんだ・・?」
意味が分からない。分かるとすれば、ただ一つ。
「翔か・・・」
ー何を考えてんだアイツは。
「ま、いっか」
ぼすっ、とソファーに腰かけ、
バサッ
持っていた雑誌を開く。
「もう、ダメかな。菖の側にいるのが辛い」
ふうっ、と深く息を付いた。
カチャ、
ぴ、ぴぴぴ
携帯を打つ。
カチャ
再び携帯を閉じたとき、涙が溢れた。
「ゴメン、な」
『裏切るの?』
皐の声。高すぎず、耳に馴染みやすい声。
「違う。・・・いや、そうかもな」
『それで良いの?』
「これが俺の決意だからね」
笑顔で答えた。