今年の桜-1
桜
散っては咲き
また散って
また咲いて
散って
咲いて
命尽きるまで……
ああ、まるで
誰かを想う心のようだ
* * * * * * * * * * *
猫を拾った
黒く艶やかな毛波の雌猫を拾った
満開の桜の樹の下で
飼えるはずもないのに俺は、そいつをアパートに連れて帰った
どうせ今夜からは一人なんだ
一晩くらいは面倒を見てやろうか
軋むドアを開け放るように猫を床に下ろした
珈琲を入れる間も体を擦り付けながら喉を鳴らして俺を見上げている
まるで泣いているかのような黒く潤んだ大きな瞳
昨日出ていった女と同じ瞳……
口の左端にある傷まで同じだ
思わずその傷を指でなぞると、猫はペロリと小さな舌を出して傷を舐めた