つかの間の愛情ー後編ー-1
恵子との"出来事"以来、一巳は罪悪感にさいなまれた。いくら酔っていたとはいえ14歳の中坊とヤッてしまった事。そして、それが友人の妹という事にだった。
しかし、一巳の考えとはうらはらに、彼女と会う度に事に及んでしまい、回を重ねていくうちに罪悪感は薄らいでいた…
回を重ねる度に恵子は子供から"女"へと豹変していった。まず一巳の呼び方が変わった。それまでは"一巳さん"だったのが"一巳"と呼び捨てになった。次は一巳の行動を逐一聞きたがり、制限するようになった。
次第に一巳の中で苛立ちが積もっていた。そして、街を歩いている時だ。
[ちょっと!どこ見てるのよ]
突然、えらい剣幕で恵子が一巳に喰ってかかる。
意味が解らず一巳は、
[なんだ?]
[今、あの人の事見てたじゃない!]
言われてその方向を見れば、高校生ぐらいの女の子が数人歩いていた。
[タバコを吸った時に、たまたまその方向を見ただけだろ]
[ウソ!ジッと見てたモン]
一巳の苛立ちはピークに達していた。
[いい加減にしろ!]
それだけ言うと、一巳は恵子を置いてさっさと帰ってしまった。
その日の夜、一巳宛てに電話が掛った。恵子からだ。彼女は泣きながら昼間の事を謝ってきた。
[ごめんなさい…アタシ、一巳…さんを自分のモノとと思って…]
一巳はあっさりと許した。お互いがまだ子供なのだ。
[オレも言い過ぎたよ。街中で痴話ゲンカなんて…また遊びに行こうな]
こうして二人はまた付き合う事となった。歳は離れているが徐々に打ち解けていった……
[オマエ、恵子とヤッただろ?]
恵子の兄、青木は一巳に訊いた。青木が一巳の家に遊びに来たのだ。"珍しい事もあるな"と、思った一巳だったが…
[どうなんだ?一巳]
一巳はどう話すべきか考えたが、妹想いの青木に対して小細工しても仕方がないと思い、あるがままに伝えた。
[ああ、オマエの妹をオレは好きだ。だから彼女としたんだ]
青木は一巳を睨みつけた。一巳もその目から視線を外さなかった。"殴られても仕方ない"と一巳は思っていた。すると、青木の目から力が抜けた。
[一巳…恵子を頼む。アレはオマエしかいないんだ…]
[どういう意味だ…]
"誰にも言わないでくれ"と、念を押して青木は口を開いた。