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つかの間の愛情
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つかの間の愛情-1

ある日の昼。学食を終えた藤野一巳は、屋上のさらに上、飲料用タンクの上に同級生の土田と二人寝そべってタバコをふかしていた。二人とも空を見上げながら、ひとときの休憩に浸っていた。

土田が一巳に話しかける。

[ひとつ上の先輩が"会に入れ"ってうるさく言うんだ。一巳どうする?]

一巳は流れる雲を眺めながら答えた。

[…なんだかヤだな。オレは辞めとくよ]

そう言って携帯灰皿に吸い殻を入れて靴下の中に入れると、クエン酸入りガムを噛み出した。

土田も同じようにしながら、さらに一巳に語り掛ける。

[そっか…じゃあオレは入ろっかな。一回、疾走(はし)ったけど楽しかったしな]

一巳はハシゴを降りながら、土田を叱りつけた。

[それよりオマエ、サボり過ぎ!学校クビになりてぇのか]

一巳に続いて土田もハシゴを降りる。

[どうでもいいよ学校なんて…何だか面白くないし…]

二人は屋上出口に向かって歩いて行きながら、

[高校ぐらい出てないで、この先どうすんだ。職なんてねぇぞ]

[いまバイトで行っているガソリン・スタンドに勤めようと思ってるんだ]

一巳はそれ以上突っ込まなかった。中卒で雇ってもらえても、たいした給料がもらえるはずがない。そればかりか、たくさんの資格を取る必要がある。結局は勉強しなければならなのだ。

しかし、今の土田にそれを言ってもまともに聞いていないだろう。
[そっか、頑張れよ]

二人は教室へと降りて行った……

藤野一巳は市内の県立高校に通う16歳。世間一般に見れば"不良"の部類に入るのようだ。しかし、本人は"バイク好きな普通の高校生"と思っていた。

"親のスネかじりが不良もないもんだ"と陰口を言う人もいたが、それは彼を知らない人々だ。彼は高校入学と同時にバイトを始めた。普通の日は夜7時から10時までガソリン・スタンド。夏休みなど長期な場合は昼間に郵便配達を掛け持ちする。

彼は学費や通学費など自分の稼いだ金で払っていた。まして服やタバコもだ。彼の家は母子家庭だった。父親を小学生の時に亡くし、それからの家庭の収入は母親が稼いでいたのだ。彼は母親の負担を少しでも減らしたい思いからバイトを続けていた……


[一巳も中免とれよ]

ある日の夕方、一巳は中学からの友達である青木の部屋で談笑していた。青木の部屋は中学時代の仲間の溜り場になっていた。今日はふたつ下の妹も一緒だ。

青木は高校に行っていない。"親の跡継ぐから"っと高校に行かず、フラフラしている。妹も同様であまり学校に行っていないそうだ。青木の家は建設業を営み、父母とも夜にならないと帰って来ない。それが彼らの生活を助長していた。


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