カオモジ(後編)-2
ベンチの真後ろに、アイツが立っていた。
私は驚きと恐怖のあまりに、ベンチから弾けるように滑り落ちた。
「殺してやる…」
「や…、いや…」
喉が詰まって声がでない。目からは、涙腺が壊れたように、涙が溢れてくる。
ただ恐ろしかった。
目の前に立つ男の姿。
私は、彼が何度も何度も口にする「殺してやる」の言葉が恐かった。
その手に握られた包丁も、それにべっとりとついている血も 、恐かった。
その血が、マキのものだと無意識に悟ったことも、悲しいより、恐かった。
「殺してやる…」
ゆっくりと彼が私に近づいてくる。
私がなによりも恐ろしかったのは、彼の、表情。
彼の顔は、なにか人間ではないようなものに見えた。
口は笑ってるみたいに大きく吊り上がって、ピエロのメイクのよう、けれどそれなのに、眼は大きく見開いていて、全く笑っていない。さらにその奥の瞳はただ私をじっと見つめていて、ガラス玉のように見える。
アイツのメールによく書かれていた、顔文字にそっくりだった。
「殺してやる…」
顔文字の男はゆっくりとナイフをふりあげ、私の前に翳すと再び、ニヤッと笑った。
私はなすすべもなく、そのナイフを
『殺してやる\(゜∀゜』