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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!-1

夕食の時刻。家々の外に食欲をそそる香りが漂う。

[母さん、ただいま!今日の晩ごはん何?]

母はその姿を見て呆れたように、
[なあに佳代!またそんなにホコリだらけで。先にお風呂に入って来なさい]

男の子のようなトレーナーにジーンズ姿。ショート・カットの髪型に太い眉。かろうじて女の子と分かるのは大きな瞳ぐらいだ。遠目には女の子と判断されにくい。

佳代は母にだだをこねる。

[お腹ペコペコだよ〜!先にごはんにして]

母は"仕方ないわね"と言いたげなため息をつくと、

[じゃ、手を洗ってきなさい]

"は〜い"と言って洗面所に向かう佳代を眺めながら、母はまた、ため息をついた。

"もう少し女の子らしくならないかしら"母はそう思った。今日も"出掛けてくる"と、野球チームの練習に行ったのだろう。

おかげで遊んでいるのは男の子ばかりだ。近所の女の子との仲は良いのだが、一緒に遊ぶ事は少なく、彼女に言わせれば"男の子と遊ぶ方が楽しい"のだそうだ。

佳代の所属する野球チームはその地区では強く、何回か地区優勝も果たしている。

最初、佳代が野球をやりたいと言い出したのは9歳の頃だ。元々身体を動かす事が好きで、一緒に遊んでいる男の子達と共に"体験入部"したところ楽しかったらしいのだ!

以来4年間、男の子の中に混じり彼らに負けないよう練習を重ねていった。そのおかげか、最後となる6年生でライトのポジションをもらった。

それから一年足らず。来月には中学生というのに、相変わらず男の子達と野球に勤んでいる佳代だった。

何処の家庭にもある夕食の風景。母と佳代。それに弟の三人の賑やかな食事。父はまだ仕事のようだ。

母が佳代に話しかける。

[佳代。中学生になったら部活はするの?]
[やひぅふにはひふ]

口いっぱいにご飯を頬張ったまま佳代は答える。が、母は、

[口にモノ入れたまま喋るんじゃないの!飲み込みなさい]

佳代は一気に飲み込むと、お茶をグビグビと飲んで、"フーッ"と一息着くと母に言った。

[野球部に入るの]

佳代の言葉に母は驚きを隠せなかった。

[アンタ、中学でも野球やるの?]
佳代はニッコリ笑いながら、

[うん!]

母は呆れたように、

[アンタねぇ、中学になったら今までみたいなレベルじゃないのよ]

[大丈夫だよ。私、野球好きだし]
[そうじゃないの!努力で何とかなるレベルじゃないの]

[うるさいなぁ、やるの!]

母も自身の意見を曲げない性格だが、娘の佳代も負けていない。親子だ。そのやりとりを黙って眺めていた弟が、

[姉ちゃんは"おとこおんな"だから大丈夫だよ]

二人の視線が弟に向けられて、
"ちょっとアンタは黙ってなさい!!"と声を揃えて返ってきた。弟はうつ向いてごはんを食べだした。


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