やっぱすっきゃねん!-2
佳代と2歳違いの弟、修は佳代と同じチームに入っており、センターとピッチャーの控えだ。彼は姉に連れられてチームに入った。
チームにたった一人の女子選手がレギュラーであり自分の姉というのは自慢出来る事だが、普段の男の子のような姉には困っていた。
まだ母とのやりとりは続いていた。
[母さんが何と言おうと絶対に野球をやるからねーだ]
佳代は"アッカンベー!"の仕草を母に向ける。
母も負けじと、
[だったら朝も自分で起きないよ!朝練なんて5時半には起きて7時から練習があるんだからね!私は知らないわよ]
"5じはんん!!!"朝なかなか起きれない佳代は心の中で絶句する。だが、後には退けない。
[行くわよ!5時半だろうが4時だろうが絶対に!]
その後、二人は無言のまま食事を続けた。両方を身ながらクスクス笑う修。
[何笑ってんのアンタ、さっさと"素振り"してきなさいよ]
とばっちりを受ける修。ご飯をかき込むと庭へと向かった。佳代も"ごちそうさま"とだけ言うとバス・ルームへと消えた。テーブルに残った母は、使った食器を重ねながらため息をついた……
中学校の入学式。体育館の保護者席には佳代の母がフォーマル・ウェアに身を包み、娘が現れるのを待っていた。
"新入生、入場!"という生徒会の司会のかけ声と共に保護者席の間を割って、新入生が会場に入ってくる。保護者や教師達からの大きな拍手に讃えられて。
母が佳代の姿を見つけた。家でも見たが、セーラー服姿が実に似合わない。本人も小さい頃からの久しぶりのスカートで、馴れないらしく歩き方がぎこちない。
粛々と入学式は進行していった……
入学式が終わると、次はクラス分けがあり、佳代は3組になった。クラスの女子の知り合いは二人。対して男の子は10人。同じチーム・メイトも3人いる。
[佳代、制服似合わねーな!]
チーム・メイトの一人、橋本淳(タダシ)が佳代をからかった。
[しかなねーじゃん!女子はセーラー服って決まってんだから。アタシだってこんなスースーするのヤダよ]
淳は声を出して笑う。いつの間にか数名の男子が佳代の周りを囲んでいた。
[オマエ部活はやるのか?]
淳のとなりの川口直也が訊いた。彼はライバル・チームの選手だったが小学校では同じクラスだった。